第10話 続ウサギ狩り
本日3体目の解体を終え、桶に袋を入れて冷やす。その上から布を掛けておく。
また平原の奥のほうに歩きながら、気配感知で周囲を探っていく。どうやら気配感知は10m範囲ぐらいしか分からない。これもまた熟練度が上がれば効果が上がるとは思うが、現状では歩き周らないと平原ウサギがいる場所の特定ができない。
今度は先程より左側の方へ探っていく。
少し歩くと平原ウサギらしき大きさの反応があった。
短剣を構えて反応のあった場所に進んでいく。
こちらの近づく音に気付いたのか、すぐにこちらに向けて突っ込んできた。
位置も動きもはっきり分かっていたこともあり、突撃に合わせてカウンターで喉を斬り裂く。相手の動きが読めるようになり、タイミングさえ間違えなければ、喉を斬り裂けるようになった。
桶には4体分の解体された平原ウサギが入っており、これ以上は無理なので冒険者ギルドに納品に行くことにした。
「ルイスさん。今日も平原ウサギの納品お願いします」
「おう、何体でも持ってこい」
「とりあえず4体お願いします」
「こんなにコンスタントに数稼げる新人も珍しいぞ。これならすぐに等級上がるんじゃねーか」
等級は当然依頼を達成した数で上がっていく、途中までは。まあ上級冒険者の等級が上がる条件なんて聞いてはいないが。少なくとも6等級ぐらいまでは依頼を普通にやってれば、いつかは上がれる。
当然俺は肉を納品しているので、遠くないうちに9等級になるはずだ。
「等級が上がるのは嬉しいですが、今のところあんまり関係ないですね。それより1回の納品で4体持ってくるのが限界なんですよね。ここまで運ぶのが大変です」
「ふむ。あそこにある荷車貸してやろうか? ここ3、4日は使う予定ないしな」
「貸して貰えると助かります」
早速貸して貰った荷車に、追加で買った分も含めて桶を4個載せてから平原に戻った。
荷車は道から少し離れた、草が生い茂って隠れるところに置いておく。
ゆっくり歩いて平原ウサギを探す。
少し先にちょうど1体の反応があり、短剣を構えて近づいていく。
平原ウサギはこちらに気付き、突っ込んできた。この時、更に奥の方から2体がこちらに近づいてきた。どうやら1体だと思っていたのは間違いで、3体のグループの1体しか感知範囲にいなかったらしい。感知範囲が狭いとこういうこともあるのか。
奥の2体に気を取られて、反応が遅れた。カウンターは諦めて何とか横に避けた。
目の前の状況と、気配感知の把握に頭がキリキリ痛いが、再度突っ込んできた最初の1体に意識を集中する。今度は上手くタイミングを合わせることに成功して、短剣で喉を斬り裂いた。
残り2体。左右に分かれて突っ込んでくるのを見て左側の1体に狙いを絞った。左側に避けながら1体の喉を斬り裂いた。残りは1体となり感知で位置を把握して、短剣を構えて迎え撃った。
今の気配感知の熟練度では、こういう事もあるということが分かって良かった。それでも3体に襲われながらも対処できたのは、成長の証か。
それからは用心したが、特に問題なく平原ウサギ狩りを続けることができた。
合計16体を狩ったところで終了することにして、ギルドに納品した。
◇ ◇ ◇
「リーネ、夕食頼む」
「は~い。今持っていきますね」
さすがに数をこなしたから慣れてきたのか、今日は普通に食べれそうだ。
「シオンさん、今日は大丈夫そうですね」
「昨日言った通りだろ」
「良かったです。冒険者の中には解体を面倒に思ってやらない人もいるんだそうです。シオンさんはさすがですね」
夕食が終わり、いつもの鍛錬を井戸でやってから部屋に戻った。
早速いつもの日課のステータスを確認する。
ステータス
================
名前 シオン
種族 人間
年齢 16
スキル
戦闘 短剣術☆0 ( 0.28 ) △0.03
剣術☆0 ( 0.74 ) △0.03
身体 体力強化☆0 ( 0.75 ) △0.02
頑健強化☆0 ( 0.15 )
筋力強化☆0 ( 0.52 ) △0.02
器用強化☆0 ( 0.19 ) △0.05
敏捷強化☆0 ( 0.25 ) △0.06
特殊 気配感知☆0 ( 0.27 ) △0.12
解体☆0 ( 0.35 ) △0.15
並列思考☆0 ( 0.05 ) △0.04
魔法 生活魔法★1 ( 0.23 ) △0.05
加護 転移ランダム特典 金一封
転移特典 言語理解
転生ランダム特典 生体掌握網
転生特典 成長促進
================
最近は鍛錬以外は短剣を使っているので、剣術の伸びが少ない。剣術が★1にならないと魔物討伐依頼は受けられないが、当面は平原ウサギ狩りで良さそうだな。少しずつだがお金も貯まり始めてきたし、明日からもウサギ狩りだ。
◇ ◇ ◇
「シオン、悪いが明日は荷車使うから、貸すことができないぞ」
あれから4日間、荷車を平原ウサギ狩りに利用させて貰った。
「はい、始めから聞いていたので問題ありません。ずっと狩りをしていたので、明日はゆっくり休むつもりです」
「ああ、休めるときに休むのも大事だしな。まあ休み過ぎるヤツはまず成功しないがな」
ルイスさんはそう言って笑いながら、査定の紙を渡してくれた。
明日休みにしたのはいいが、何をするかまったく決めていない。
何をするか悩みながら、受付カウンターに納品の報告に行った。
明日何をしようか考えていたが、一つ思い浮かんだことがある。
魔法だ。当面狩りは剣だけでも大丈夫だが、今後を考えると属性魔法などを覚えていきたいと思う。
これまでのことからの推察になるが、[生体掌握網]には、スキルにしろ魔法にしろ、体でその状態を体験すると、それに最適なスキルを検索して取得リストに表示してくれる機能があるような気がする。
それを踏まえると、属性魔法についても一度発動させてしまえば、取得リストに出てくる気がするのだ。これを考えついたのも、町を探索したときに魔道具屋で魔法スクロールを見つけたからだ。
この魔法スクロール、開発されたのは結構前なのだが、需要がないらしい。店にあったのはそれぞれ、土水火風の塊を前方に飛ばす魔法スクロールだ。需要がない理由は、威力があまりなく、牽制目的にしか使えない上に、消耗品なのに高い。それでもお金に余裕がある冒険者が買っていくことも少しはあるらしい。
需要が少ないのに何故そんなに供給されてるんだ?と思って聞いてみたら、魔法陣の練習にいいみたいで量産されたうちの何割かが売りに出されているようだ。
翌朝鍛錬前に魔道具屋に来た。
色々な魔道具が置いてあって、詳細に見て回りたいところだが、今日の目的は魔法だ。目的の魔法スクロールを手に支払いをするため店員さんに話しかける。
「おや、この前お見えになったお客様。熱心に魔法スクロールについて聞かれていったので珍しいとは思っておりましたが、ご購入されますか?」
魔法スクロールの説明をしてくれた、年配の店員さんに覚えられていたらしい。
「はい、やっぱり試してみようと買うことにしました」
「ご購入ありがとうございます。4本で小銀貨4枚頂戴いたします」
1本で小銀貨1枚。しかも1度使うと終わり・・・ これは稼いでる冒険者しか使えないな。
使い方について説明を受けてから店を出た。
鍛錬の前にまず魔法スクロールを使ってみる。別に敵の牽制に使うとかではないので、適当に発動してみる。
目標の場所に向かってスクロールに魔力を込める。スクロールがパラパラと崩れていくのに合わせて、岩の塊が目標に向かって飛んでいった。適当に使ったら、土魔法スクロールだったみたいだ。
早速ステータスを確認する。
◎取得可能魔法リスト
土魔法
予想通り属性魔法の取得条件をクリアしたみたいだ。
続けて残り3つのスクロールを使い、4つの属性魔法を取得した。
当然これからの鍛錬は魔法もやっていくとこにする。
実際に使ってみたら、鍛錬の必要性を痛感した。
特に呪文というものは必要ではなかったのだが。現状の熟練度では使い物にならないことがよく分かった。
土魔法でスクロールでやったような、岩石を目標に飛ばすイメージで使ってみると、小さい石が5mぐらい先に落ちた。他にできないか考えて、穴を作るイメージでやってみたところ、深さ30cmぐらいの穴ができた。これはこれで使い道はあるが。
他の属性魔法も似たり寄ったりで、実戦では到底使えないだろう。
ただ、あまりショックではなかった。☆0の時点の効果は予想できたので、むしろ★1以上になったときが楽しみだ。
ステータス
================
名前 シオン
種族 人間
年齢 16
スキル
戦闘 短剣術☆0 ( 0.29 ) △0.01
剣術☆0 ( 0.77 ) △0.03
身体 体力強化☆0 ( 0.77 ) △0.02
頑健強化☆0 ( 0.15 )
筋力強化☆0 ( 0.54 ) △0.02
器用強化☆0 ( 0.19 )
敏捷強化☆0 ( 0.25 )
特殊 気配感知☆0 ( 0.31 ) △0.04
解体☆0 ( 0.35 )
並列思考☆0 ( 0.06 ) △0.01
魔法 生活魔法★1 ( 0.26 ) △0.03
土魔法☆0 ( 0.04 ) △0.04
水魔法☆0 ( 0.04 ) △0.04
火魔法☆0 ( 0.04 ) △0.04
風魔法☆0 ( 0.04 ) △0.04
加護 転移ランダム特典 金一封
転移特典 言語理解
転生ランダム特典 生体掌握網
転生特典 成長促進
================
今日の鍛錬で属性魔法も熟練度が上がっている。実戦で使えるようになるのはまだ先の話だが、今の剣以外にも攻撃のバリエーションが増えるのは楽しみで仕方ない。
明日からはまた平原ウサギ狩りを再開する。もう少し稼いだらステップアップも考えていいかもしれない。
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