完全愛
楓
完全愛
佐那「人類滅ぼして地球征服しようよ!!!」
私の彼女がそう言ってくれた。そうすればいいんだ。
私、夏希と佐那は付き合ってる。女同士で。
お互いメンヘラみたいな感じで、共依存状態。毎日セックスしまくりで愛し合いまくってドロドロになって混じり合いたい。
あ、つい漏れ出てしまった。欲求が。
そんな感じの生活をしていたらある機会に巡り合えた。
私が手にした”能力”
突拍子もないことだけど、なんだか手にしてしまった。私の細胞は筋肉にもなるし脳ににもなるし鉄にもなる。分離して動けるし。
能力っていうより、私が人間じゃなくなったと言ったほうが正しいか。なんかよくわかんないけど朝目を覚ましたらそうなってた。
そしていろいろわかったあとに恋人の佐那が言ってくれたんだ。この力を使えば二人だけの世界を作れるって。
人は誰しも永遠の愛を実現できない。永遠なんて無理だろうと。無限を現実にするに等しい無謀な行為。
ある人は人間関係を原因に愛が終わる。ある人は仕事で会える機会が少なくなって愛が終わる。ある人は子供を作って愛情を注ぐ対象が一人から二人になってしまい、愛が終わる。病気、考えの変化、老化による外見の変化。いっぱいある。
そして、寿命。
誰もが諦める、永遠の愛。諦めずに足掻くも誰もができなかった。けど私なら、私と佐那ならできる。人類史誰もが為しえなかったこと。
私なら寿命の問題を解決できることが分かった。
私の腕を分離させて怪物の見た目に変化させた。
佐那「え、こ、怖すぎるって......」
夏希「い、一応私の分身なわけだし。それに考え方や感触も共有できている。というより、重なっていると言ったほうがいいか。」
佐那「二つの人格、視点が同時に存在してるなんて難しいよねー。夏希のその変化を理解するためにめっちゃ脳みそ鍛えられた気がするくらいだもん。いろいろとむずかしー」
夏希「けど、知れば知るほど私ができることはたくさんある。」
分離した私の外見を変化させて、まずは野良猫を食らってみた。
空腹感(?)みたいなのがなくなった。元気が出てきたというか。
そして私の体の体積が文字通り”増えた”
縮めようとすればできるっちゃできるけど、「増やすこと」ができることが分かったんだ。
そして私自身がほかの生き物に乗り移ることを試してみた。
また野良猫を掴まえて一緒に住んでるアパートに持ち帰る。
やってみよう。私自身がこの猫に入り込むことを。
夏希「佐那、一応撮影しといてー」
佐那「わかった。任せて。」
う、うお、うおおおお、おおおおお、お、おおおおおおっ!!!
脳に入ってくる情報が変化した。落ち着けー落ち着けー。
人間以外の生物になっただけだ。そりゃそうなるのが当たり前。
佐那「ああああああ、なんかやばい。」
今の私って喋れるのかな。内側からこの猫の体を乗っ取って吸収し、人間の口の構造、というか喋れる構造に変化させよ。
夏希「あ、あーあーあー。声帯チェック。」
佐那「うわっ!!!猫が夏希の声で喋ってる......」
夏希「細胞を直接支配してDNAを私のものに入れ替えれば私の人格がそのままで別の生き物の体に乗り移れる。実質不老不死だよねこれ。」
佐那「その方法で私の脳みそも移植すればいいじゃん!!!」
夏希「佐那までそうするのはリスクがあるというか......」
佐那「不死なら時間あるし医学学べばよくね?」
あ、やっぱり佐那は最高。頭いい。
こんな感じでいろんな障害障壁はクリア。
そして、まず私たち二人以外の人間はいらないからさっさと消す。
夏希「今、分離した私がとにかく生き物を食べまくって個体数を増やしてる。人間はできる限り捕食して吸収したい。軍とかが来た時のために、そういう覚悟はできてる。佐那と二人きりになるためだから。」
佐那「.......ありがとね、夏希。頼りっぱなしだねなんだか。」
夏希「仕方ないよ。佐那が外に出たら危ない。だから今はここで隠れてよう。」
万が一に備えて私と佐那は住んでる場所からそこそこ離れた山で穴を掘ってその中で簡易的な部屋を(私の体の一部を使って)作ってそこで人類滅亡を待つことにした。
すべての私の体の一部、というより細胞単位で、脳にもなるし筋肉にもなるし鉄にもなれる。
部屋も、何かがやってきたら”攻撃”して追い払うのも、雪に埋まって生き埋めなんて自体を避けるために”動く、岩や雪をどかす筋肉の稼働”もすべてできる。
分離した私は一応今どこで何してるか分かる。というより、いくつもの私が重なってるような感じ。
とにかく待つだけ。
___________________
日本から中国、ロシア、そしてヨーロッパインドオーストラリアアフリカへと拡大しつつある。
米軍とかに武力で制圧されないかって?
大丈夫大丈夫。私の細胞は脳に”も”なれる。人間の姿に擬態してインターネットを見て、今どの程度情報がバレているか把握できる。
人間に擬態するだけでもいい。ちっちゃくなって人間の体内に潜んで、重要な政府機関や軍の施設にその人間が入ったところで勝ち確定。
さらにさらに!!!
人間を乗っ取るとその人間の記憶を参照できる。つまりは技術者の脳みそを乗っ取ってその知識を共有。
邪魔な武器とか全部安全に破壊して先手を打つ。誰かがやけになってミサイル使うとかしないようにね。
アメリカ、ロシアとかそういうことをする必要があって手こずったけど、それに比べれば小さい国は制圧するのは簡単。
けど厄介な問題が残ってる。宇宙ステーションにいる人間の処理だ。自暴自棄になって全部落下させて諸悪の根源ぶっ壊すとかされる可能性がないとは言い切れない。
そのことに気づいたから航空宇宙関連施設の人間の知識の吸収に徹した。
既に地球上の大陸上の人間のほとんどが私の分身。つまりは数十億人分の私の細胞がある。流石に多すぎるか.......
半分以上は予備として世界中にちっちゃく縮こまって待機とか?うーんあとで考えよ。
そうだ。ここまで一方的な侵略が続くと残った人間は南極に向かった。
北半球の日本から拡大して、地理的に離れている南極に船で避難。確かにそこに辿り着くか。
どうするつもりなんだろ。一応観察しつつ放置してみよう。何をするのか興味あるし。
夏希「ねえねえ。残った人間、ほんの百数人くらいが南極に残ってるけど、どうする?」
佐那「え、もしかして弱った人類がどうなるか観察するわけ?!」
夏希「興味ないと言ったら嘘になるし.......」
佐那「面白そうだけど、移動手段全部壊してこっちに来ないようにしといてね。」
というわけで、南極大陸にいる私の一部分が船をぶっ壊してくれました。多分そのうち作ろうとするので壊すの繰り返しです。
てなわけで地球征服完了!!!
佐那と一緒にやっと自由に太陽の下で過ごせる、と思ったけど隠れ潜んでる厄介者がいる可能性を考慮して完全武装徹底的護衛つきでやる。
私と佐那はいつもべったりくっついてるのでそこから半径5キロメートルの範囲内を地中含めくまなく調査。
五重くらい透明な壁を作ってます。
そして私自身は佐那と一緒に誰もいないデパートで服選び放題、食べ物はえーっと、ないね......
夏希「流石に長持ちするやつばかり食べてたし、それ以外食べたいよね.....」
佐那「それは仕方ないっちゃ仕方ないって覚悟はしてたけど、いざこうなると。あ、畜産農業そして料理くらいは夏希の分身に任せたらいいんじゃない?」
夏希「それってつまり、私一人で食糧の自給自足を回すということか。」
佐那「それだよ。というか最初からそれで食料は繋いでくでしょ。ついでに図書館とか行って、知識も全部二人占めだよ!」
二人だけで生きるってこんなに楽しいんだ。
デパートの家具売り場のベッドで寝てる。なんだかいけないことしてる感じ。
夏希「これは、あれだね。修学旅行の夜に似てる。」
佐那「......わくわくしすぎて寝れそうにないかも。」
夏希「いや、寝ないとだめでしょ。結構長い間あんま広いとは言えない密室で私と二人きりだったし。」
佐那「二人きりだから問題ない!疲労溜まってません。」
___________________
動く車がないから、大きな交差点の真ん中で寝っ転がる。
視界のど真ん中に太陽ある。こんな時間に風の音しかしない都市部。
すげ=。これ全部私たちのもの。いや、正確には使えるってだけか。
あ、ロケットが発射したそうだ。私の分身が準備を進めていた。
今、私たちがいる場所の裏側で打ち上げられて宇宙ステーションに衝突。瓦礫が私たちに降り注ぐことはない。うん。問題なし!
これで生き残った人間は山奥に潜んでるような少数のやつらと南極で立ち往生のやつらのみ。
人間は見つけ次第吸収するか殺すかの二択。南極にいる人たちは見世物ってことで監視し続ける。
___________________
佐那「ねえ夏希。ここにおうち建てたい。ここで暮らそうよ。」
そういって佐那が教えてくれた場所は美しい場所、ていったら流石に語彙力なさすぎるか。
花畑が広がっている。こんなの本当に実在するのかよって驚くほどきれい。そして傍に湖がある。
緑があって青があって。そりゃこんな場所で彼女と一緒に暮らそうって言われて、それが簡単に可能なわけだから頭空っぽになって語彙が乏しい感想しか出なくなっちゃうよ。
この幸福をどう表現すればいいのかわからない。私の語彙じゃ限界だな。
佐那「私たち、本当に永遠に一緒にいられるね。」
夏希「そうだね。佐那、私たちはずっと一緒。」
これ以上どうやって表現すればいい?これ以上の幸せがある?
完全、完璧な愛の実現。完全な愛。
完全愛 楓 @reality
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます