第38話 核心へ
「先生!!」
村本さんが僕の元へ走ってきた。
「いつやったのか分かりません。けど、天宮さんが左手首をリストカットしていました。なぜだか分からないのです。一体いつやったのでしょう」
「ビデオに残っていませんか?」
「それは分かりません。目を離したつもりはないのですが」
「今日のお昼は何でした?」
「え?」
僕は昼ご飯に彼女がやったものだと推察した。僕の時もそういうことは稀にあった。
多分このパターンはそのときのフォークか何かで抉っているのではないかと容易に考えられた。
「・・・魚のフライですが」
村本さんが困惑しているようだった。でも僕は昼間の可能性が高いとみた。
ビデオを確認し、やはりそうだということが判明した。しかもカメラに見せつけるようにフォークを手首にぶっ差し、二個の傷をつけたのを僕は確認した。
今のところ『天宮 いつき』は安静にしているようだった。
驚きもせず、何となく手に乗せられていたタオルを見ているだけだった。
フォークで抉っただけなので、きっと僕は縫う必要は無いだろうと判断した。
だが、あまりにもぼーっとしている彼女を見て、ああ、これは、と僕は考えることになった。
『離人症』だ。
僕の時もあった。解離を起こしている人間は色んな症状を併せ持っていることが多い。
その中に『解離性障害』の中で離人症というものがある。
自分が自分で無いような感覚がするなど、まるで機体に乗った兵士のような感じで、機体の損傷はあまり気にしないようなぼーっとしている状態が『離人症』の特徴である。
この『離人』のときに別人格が現れる可能性が高いと僕は知っているので、『天宮 いつき』に僕は軽いガーゼと消毒液を村本さんにお願いして、僕は彼女の元へゆったりと余裕を持って歩いて行った。
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