第31話 交代人格『満』

「僕?ですかぁ?」


 「そう君のこと。少し、外で話さないか?」


 外にはみんなん出たいと思っているはずだ。これはいい交渉材料になるのではないか?


 「・・・・Wi-Fiって外でも使えますかぁ」


 ほらきた。僕の思ったと通りだ。


 「もちろん、使えるよ」



 ここのWi-Fiの環境はかなり整っているはずだ。彼のパソコンだってもちろん、ネット環境はちゃんと整えている。


 「・・・なら、少しだけですよぉ」



 よし乗ってきた。彼らが行けてもデイルームまでだが、それでも彼らには新鮮に映ると思うんだ。



 「よし、では行こうか」

 

「え、でもぉ、お仕事は・・・・」


 「早いほうがいいだろ」


 僕は扉を開けたまま、部屋から出た。パソコンを握り締めた彼は僕の後についてきた。やっと外の世界を見られたのだ。


満くんの瞳は輝いているように見えた。



彼と話しながら長い廊下を歩く。




真っ白い窓もない廊下は夜か昼かの区別がつかない。いつも蛍光灯が付いているだけの簡素な作りとなっている。たまにチラホラ部屋があるのだが、それは全て『保護室』となっている。さすがにここを歩いている時は、僕は白衣を着なくてはならない事を説明して彼からは了承を得ている。


白い白衣が壁に吸い込まれてどうかしている様な真っ白い廊下を抜けると、その先にはまた、真っ白い扉が現れる。


ここは鍵がかかっているので僕や、特別な鍵を持っている人しか通ることはできない。



 「ちょっと待ってね」


 「はぁい」


 僕は胸ポッケトから鍵が何個もついた束を取り出し、その中からゴツい鍵を扉に察し込んだ。この扉には取手がなく、体で押して開けなくてはならない。



カチャと音がして僕は扉を押した。



 「よいしょ」



 僕はいつも通りに開けたつもりだったが、満くんには衝撃的だった様だ。


驚いた顔をしていた。小柄な『いつき』さんの体では開けることはできないかもしれないな。



 「驚いたかい?ごめんね。こうゆう作りにしないと色々危ないんだ」



 「何が危ないんですかぁ?」






 「それは・・・・」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る