第27話 いつきさんについて
こうして天宮いつきには『解離性同一性障害』が確定したわけだが、残る人格との対話に僕は何年かけることになるか、わからない。
しかし、彼女達と僕との戦いは始まったばかりだ。
ここから僕はチームを作ることになった。脳内科にいた伊藤さんを教授にお願いして、精神科にひっぱってきて、伊藤さん含む、看護師のチーム、僕と教授を含んだ医者チーム。
でも基本的に『解離性障害』は環境の変化と不安定な対人関係が要因として挙げられる。その為、医師チームは基本的に僕が、看護師チームは伊藤さんともう一人、看護婦長でもある水木さんにお願いすることにした。
夜間は致し方ないとしても日中なら僕か看護師の二人で対応できるだろう。
それから僕は彼女達の一日の様子を詳しく観察していった。暇さえあれば彼女達のいる『保護室』の監視カメラを見る日々。
レンチンのパスタを啜りながら「天宮 いつき」を観察する。そこに看護師チームの一人、伊藤さんが話しかけてきた。
「伊勢原先生」
「ん?どうかしましたか?」
「いつき、天宮さんは本当に『解離性同一性障害』、昔でいう多重人格なのでしょうか?」
彼女は天宮さんの『解離性同一性障害』を疑っている様だ。僕の誤診とも考えている様に見える。
確か、彼女は天宮さんの友人だったはず。彼女からももしかしたら、何か話が聞けるかも知れない。
僕はそう思い『天宮 いつき』のウォッチングをしながら彼女から話を聞くことにした。
「天宮さんってどんな人でした?確か、伊藤さんは天宮さんと大学が一緒なんでしたっけ」
「私は天宮さんの友人であり親友でした。でも、彼女はそんな『人格が変わる』なんてことは大学時代も今までも、ありませんでしたよ」
話を聞く限り、「天宮 いつき」は明るくていつも笑顔で真面目であった様だ。そんな彼女が何故と思うのは自然なのかも知れない。
僕はナースステーションの椅子を借りてパスタを啜った。今回のパスタはボンゴレパスタだ。貝がうまい。
白衣に付かないように気を付けながら僕はパスタを啜りながら伊藤さんの話を聞いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます