第26話 人格の交代

 「代わってくれないかな?」


 「ちっ」




 舌打ちをして、彼、翔太くんは静かに目を閉じた。次の瞬間、何かオーラ?雰囲気が変わった。


 これは人格の交代か。彼女が目を開けた途端、




 「初めまして」


 「は、初めまして」



 挨拶をされた。


 あまりにも急だったものだから僕がびっくりしてしまった。




 「私は美咲です。貴方が、伊勢原先生ですか?」


 「そうです美咲さん」





 「よくも私たちの『いつきちゃん』をいじめましたね」





 いじめ?僕はそんな事はしてない。ただ自分を見つめ直してもらっていただけだ。



 

 「僕はいじめてなんていませんよ」


 「嘘おっしゃい。あの子は繊細なんですよ。それをああも追い詰めて何がしたいのです?」




 この人格もかなり僕にご立腹のようだ。本体を守る役割を人格は皆持つと言う、そうゆうことか。




 「美咲さん、あなたが仕事をこなしていた方ですか?」


 「私から答えることはありません。伊勢原先生、貴方じゃ話になりません」




 僕では無理か。


 ここまでのようだ。仕方ない。後日、出直すとするか。教授も呼んで。




 「言っときますが私たちは貴方たちのおもちゃではありませんので、もう『いつきちゃん』を出したりはしませんよ」


 「それは困ったな」




 僕は苦笑いを浮かべて立ち上がった。





 天宮さんの中の美咲さんはそんな僕を黙って見送った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る