第25話 別人格
「よお、うちのを随分可愛がってくれたじゃねえの」
天宮さんの目が虚になった途端、ドス黒い声が聞こえた。
これがあの天宮さんなのだろうか?
男っぽく喋る天宮さんはその場にどすんと座り、僕を睨んだ。
僕のことはちゃんと認識しているようだ。僕は賭けに出た。
「君は誰?」
これは賭け。
もし何でもない天宮さんであればこの答えは『いつきです』とか『天宮ですけど』とかになるはずだ。
しかし、この賭けは僕、伊勢原の勝ちのようだ。
「俺は翔太。天宮翔太だ」
勝った。
これは僕の勝ちで決まりのようだ。
天宮さんには今まで薬は与えていない。
と言うことは薬物性の人格障害ではないと言うこと。
すると妄想の可能性もあるが、それは否定でいいだろう。
この場所で妄想なんて難しいだろうし、彼女にはできるだけストレスがない状態で過ごさせて来た。
これは、『解離性同一性障害』で間違いないだろう。
「翔太くん、君はいくつかい?」
「なんで答えなきゃなんねーんだよ」
この人格はかなり僕に否定的な印象を持っているようだ。仕方ない、彼と打ち解けるところから始めよう。
こうして僕と翔太くんの会話が始まった。
「何が好き?」
「うっせ」
「君はいつからいるの?」
「黙れよ」
「君の他にもいるのかい?」
「いるよ」
ここは素直に答えてくれた。ここからまた賭けだ。これに応じてくれると助かるんだけどなぁ。
「君の他には何人いるの?」
「わっかんね。多分、六人ぐらいはいるな」
「そのほかの人とは変われる?」
六人は正直、驚いたがここからが本題だ。
これに勝てれば。
「いいってやつがいる」
きた。
これで先に進める。
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