第24話 仕方ない、書くか
このままでは仕事に支障が出てしまう。それは嫌だ。仕方なく私はA3用紙を広げた。
まずは何を書こう。私の少ない記憶の扉をひっくり返してどこから書くか迷った。迷って、思い出せたのは小学校一年生の頃だった。
この頃、私は友達と一輪車で遊んでいた。それが最古だ。友達の名前は確か江麻ちゃん。
よく私の一輪車を取られていたな。江麻ちゃんのおうちは貧乏だったので一輪車を買ってもらえなかったのだ。
だから私は、私は?どうしたんだっけ?思い出せない。
でも小学校一年生なんてこんなものだろう。
その後も二年三年と書き進めていった。
四年生になってからだ、急に思い出せなくなった。
何にも覚えていない。
その年だけストンと抜け落ちたかのように思い出せなくなっていた。
まあこういうこともあるだろう。
その後、小五、小六、中一と中二?を書いていく。
やっぱり思い出せない一年間が何箇所かあった。
でもこれは昔のことだから。
そう割り切って私は一日全部を使って自分年表を書いていった。
翌日、いつも通りにきた伊勢原先生に年表を渡した。
それを見て先生は、
「んん?」
と唸る。
どうしたのだろう。
私なりに頑張って書いたつもりだ。
「天宮さん、これは本当に『自分の思い出』ですか」
「え、はい」
「『本当』ですか?」
「・・・・・・・・」
私は言い返せなくなってしまった。
これは多分、おそらく私の思い出だ。
でも、こう言われると本当にそうなのかなっと思ってしまう。
『自分がわからなくなっている?』
もしかして、
私はこの前調べた『解離性障害』のことを考えていた。
もしかして、私は『解離性同一性障害』?しかも私自身、人格だったりするの?
ガクン。そう思い始めた途端足元から崩れる感じがしてグンっとエレベーターのガクンと言うあの感覚を覚えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます