第20話 誰?

 〈前を向けだって?ふざけんな〉



 「え?」



 今、伊勢原先生以外にも男の人の声が聞こえた。怒鳴るような荒々しい人の声。私は咄嗟に周りを見渡した。


この部屋には白衣を脱いだ伊勢原先生と聡美しかいない。男の人なんてしかも荒々しい人なんていなかった。



 「天宮さん?」



 伊勢原先生が不思議そうに私を見ていた。急に笑わないで辺りを見渡した私を不思議に思ったのかも知れない。



 私も不思議だった。



 あの声の主が誰なのか、幻聴なのか、それとも、幽霊?霊感なんてこれっぽっちもない私が幽霊?ありえない。



 「天宮さんがいう通り、拘束なんて本当はしたくありません。だから、僕はこの部屋の中にいる限り、この拘束を解こうかと思っています」



 「え、先生、それは・・・・」



 伊勢原先生の言葉に聡美は驚いたような顔をしていた。普通はこのまま拘束しとくのだろう。



 でも伊勢原先生はしないと言う。



 そして伊勢原先生自ら私の身体拘束を解き始めた。

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