第14話 よくわからないけど怖い

 「はい。


 『記憶がないのに仕事が終わっている』


 『自宅までどうやって帰ったのかわからない』


 などを聞く限り、見当識障害を疑いましたし、もしかしたら若年性アルツハイマーを疑ったりしたのですが、異常が見られないのですよ。脳梗塞もありませんでした。


 これはもしかしたら



 『解離性障害』



 かもしれません」





 「『解離性障害』?」

 


 「今、精神科の先生が見てくれるか確認してみますね」





 先生はPCの隣にあった受話器を取り、電話をし始めた。



 『解離性障害』?





 私は不安になり後ろに控えていた聡美をみた。


 聡美なら知っていると思ったのだ。


 しかし、聡美はポカーンとしていた。


 聡美にもわからない病名なのだろうか?



 そしたらこれは難病とかそういう類なのだろうか?



 不安が尽きない。



 いっそのこと誰もが知っているような病気であって欲しかった。



 脳でも何でもいい。


 知られている病気であれば対処法とか薬とかあっただろうに。



 難病じゃわからないじゃないか。




 「今先生と繋がりまして、みてくれるそうです」

 

 「みてくれるって?」


 「F8番の精神科に行ってください。伊藤さん、わかりますよね?」

 

 「え、あ、はい」




 この病院は市営だけあって大きい。歯科もあれば脳内科、外科もあったりととても大きい。


 そこで働く聡美はもちろん内部を知っているわけで、「伊藤」と言うのは聡美の名字だ。


 私は何が何だかわからないまま、聡美に連れられてF8番、精神科に向かった。



 精神科、私にはとても敷居が高いところだったりする。


 なんせ、鬱の人とかが行く場所で憂鬱な気分になりそうだから。


 こんなに元気な私が行っても場違いなんじゃないだろうか。


 それに精神科といえばすぐに入院させられたりして、閉鎖病棟とかで奇声を上げたりする場所じゃないだろうか。



 怖い。




 そんな中にいかなきゃ行けないのが怖い。

 


 「聡美、帰らない?」





 不意に私の足は止まっていて俯いたまま言葉を口にしていた。

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