第11話 里帰り

 秋に差し掛かろうとしていた頃。もちろんうちの会社にはお盆休みと言うのが六日間ほどあって、その間、私は帰省をしていた。


 私は大学で地元を離れていたので、会社員になってからは毎年、お盆休みとお正月には帰省する事にしていた。


 久々の家は相変わらず汚い外観ではあるが、中はリノベーションしていて綺麗だ。平屋の一軒家で庭もある。この地域では車がないと生活できないのでもちろん車も所有している。



 「ただいま」



 「おお!帰ったか」



 私が平屋特有の横開きの扉を開けると、まだ健在のお爺ちゃんが出迎えてくれた。その陰に、チラリと知らないおじさんが顔を覗かせている。



 この方は誰だろう。



 おじいちゃんはよく家に囲碁友達や友人を連れ込んでいたので、またその類かと、私は気に留める事なく家に足を踏み入れた。



 「お爺ちゃん、ただいま。腰は大丈夫?」



 母からの手紙でお爺ちゃんがぎっくり腰になったと聞いていたので少し心配はしていた。でも今のお爺ちゃんの様子を見ると大丈夫そう。


 一時は立てなくなり、ベッド生活との話でだったが、今は立ち上がるのも苦ではなさそうだ。



 「腰かぁ?んだもん、とぉに治っとるよぉ」



 元気にガッツポーズを披露してくれたお爺ちゃん。


 良かった。今年もこうやって元気な姿が見られて私は幸せだ。



 「ところで、お客さん?」



 「んだ。ご近所の茂さんだ」




 お爺ちゃんの歩行速度に合わせながら私は聞いた。


 茂さん、なんか嫌な予感がする。




 でもお爺ちゃんは人がとても良いのでそんな怖いことはないだろうと、居間に私は入って行った。



 そしてペコリとお辞儀をして茂さんを見た瞬間、私の鼓動は早くなり、あの時と同じ感覚、エレベーターの時にも感じたガクンという感覚に陥った。

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