第9話 普通を立証する
このココアも聡美が用意してくれたものだ。
私のさっきまでの状態は『過呼吸』だったようだ。対処の仕方さえわかっていれば大丈夫なものだと聡美は教えてくれた。
私の知り合いで一番こういう『医学的な』ことを知っているのは聡美だ。
だから私は縋る気持ちで彼女に連絡したのだった。
そこは冷静だったのだろう。
聡美が私の隣に座り、お菓子のゴミを除けて、カップを置いた。
彼女のは牛乳です。ココアはあまり好きじゃないみたいだ。
「んんー。なるほどねぇ。いつき、一度、脳内科に行ってみない?」
聡美は伸びをし、私の方へ向き直った後、そう言い放った。脳内科?
「え、でも」
「でもじゃなくって」
そんな大したことないよ。と言いたかったのを聡美に遮られてしまった。
私を見る目は真剣そのもので聡美が本気で私を心配してくれているのがわかった。看護師がこう言うのだ。行かなくてはいけない気持ちが湧き出てきた。
「もし何ともなかったらそれはそれでいいじゃん。ね、行こう?」
聡美がいうのも一理ある。何ともなかったら普通なんだ。私は『普通』の社会人を立証するために脳内科にいくことを決めた。
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