第8話 パニック、からの過呼吸

 「もしもし」


 「どーした?声、めっちゃ震えてんじゃん。なんかあった?」



 自分では気づかないうちに声は震えていた。風呂上がり、タオル一枚では寒かったのかもしれないが、何だろうこの冷や汗は。


 私は優しい彼女の声を聞いて、緊張の糸が切れたかのようにズルズルとへたり込み、泣いていた。



 「まずは落ち着こうね?深呼吸深呼吸」



 彼女のいう通りにゆっくりと深呼吸をした。でも、うまく息が吸えない。嗚咽が邪魔をする。


 なんで?


 なんで?


 何で私は泣いているの?


 蹲りながら子供のように泣きじゃくる私に、彼女は



 「待ってていくから。電話は繋げとこうね」



 優しい言葉でした。それに対して私はもっと泣きじゃくってしまった。




 ——————————自分が怖い。




 怖い怖い怖い。




 彼女の家と私の家はそんなに遠くはなく泣きじゃくっている間に彼女は到着した。



 泣きながら呼吸が上手くできない私に彼女は小さな紙袋を口と鼻に押し当て



「ゆっくり呼吸してごらん。吸って吐いて」



 私は必死に深呼吸をしました。



 でも、嗚咽が邪魔をする。



 彼女に背中をトントンされてようやく私は呼吸をすることができた。



 ひゅうひゅうと必死に呼吸する私の口元から紙袋が外され、私を彼女は優しく抱きしめてくれた。



 彼女の名前は聡美。大学時代、学部は違ったもののとても仲良かった友達だ。

 


「で、いつき、どうしたの?」



 聡美は私が落ち着いているのを見計らって服を着せ、事情を聞いてくれた。彼女は看護師だ。このような事態も経験済みなのだろう。



 パニックにもならず、落ち着いた口調でいつも通りに接してくれた。私はまだ震える体を両手で押さえながら、聡美が誘導してくれたソファーに座りチビチビココアを飲みながら、ことの始まりを話し始めた。

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