第4話 何でここに?

 そんなウキウキの私の前に、あの上司が待っていたのは予想外だった。車通りのない、狭いトンネルの中、ここにはあの時と同じ、私と上司しかいない。しかし、上司は松葉杖姿で腕にはギプス。車にでも轢かれたのか?わからないが、なぜここに?



 「待っていた、堕鬼だき



 堕鬼だき?私の名前はいつきだ。そもそも、上司は私のことを下の名前で読んだことはない。いつも苗字の天宮と呼んでいたはず。今日欠席をした、なんかボロボロの上司は何で私の前にいるんだろう?



 「お前のせいで俺はこんな有り様だ。どう責任をとってくれるんだ」



 は?私には理解できなかった。なんせ、こんなこと小柄な私ができるはずないもの。



 「黙ってないで答えろ!?」



 答えろと言われても・・・。私には身に覚えが無いので、お疲れ様です。お大事に。としか言えないのですが。そもそも何で上司は私の家の付近にいたのか?私は、教えた覚えがないのだけど。



 「えっと、お疲れ様です?」


 「お疲れ様じゃないだろ!お前のせいで俺はこんな体になったんだぞ!」



 知りません。と正直に答えたかったが、カツカツと辿々しく迫り来る上司に私は危機感を覚えた。この人を挑発しては危ない、と本能的に感じた。とりあえず、私は逃げる事にした。幸いにも私の帰り道はこの道以外にもあるので。しかし遠回りになる事には変わりないが。ダッシュで逃げる私に



 「逃げるのか?!」



 上司の声に、私の足はなぜか止まった。このまま逃げて仕舞えれば良いのに。何で?その時、またこの前のような感覚に襲われた。ガクンと・・・。

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