勇者の旅路-序-

魔王討伐の命を受けて、旅に出て数年が経過した。僕たちの旅は、ついに魔王勢力圏に入り佳境を迎えた。人類勢力圏では、様々な街や村で休息や補給をすることができた。しかし、ここからの旅はそうはいかない。この先、人類は僕たちしかいないのだ。

「早く家に帰りたい・・・」

魔術師のイキシアがポツリとこぼす。誰も何も言わないが、みんな同じように思っているのだろう。ついさっき遭遇した魔獣を、目の前の焚き火で焼く。そんな光景を眼下にしていれば、きっと誰だってそう思うだろう。人類勢力圏最後の街で買った食料は、すでに底を着いている。魔物や魔獣を食べて命を繋ぎ旅を続ける。

 僕たちは、魔王討伐という大義を殆ど失っていた。引くに引けず、ただ生きる為だけに旅を続けていた。

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死中に咲く 逢初あい @aiui_Ai

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