11 洞窟
竿の先が90度近く曲がっている。
一段と引きが強い。
うおおらぁぁ!
俺は力一杯、竿を引っ張る。
そういえばこの世界に筋力値なんてのはない。
筋トレや戦闘を重ねて肉体を強くしていく。
要するにゲームみたいな世界だが、身体のパフォーマンスはリアルのまんまってことだ。
とはいえ普段結構ハードに過ごしているから、力に自信はあった。
俺と魚の力比べ。
余裕で俺の勝利。
海面で水飛沫が上がる。
そこから2メートルくらいの魚が飛び出した。
「よっしゃあ!」
浜辺でぴしゃぴしゃ踊るそいつはゲーム時代レア度が高くてなかなか釣れなかった黄金魚。
名前の通り金色だ
食べることもできるが、コンソールで還元したら莫大なポイントになる。
確か40000Pだったか。
いいねいいね。
「マシロー、でかいの釣ったぞー!」
小さな姿を探しながら声をかける。
あれ……?
いない。
さっきまでその辺で貝殻探してた筈なんだが……。
「マシロー!」
返事がない。
焦りが浮かぶ。
やばい。
少しでも子供から目を離すべきじゃなかった。
見える範囲に姿はない。
ジャングルに入ったか?
でも日頃から森に一人で行くなって言い聞かせているんだ。
あの子は賢い。
それはないだろう。
まさか溺れた?
様々な考えに及んでいた俺はそれに気づく。
足跡だ。
俺の拳くらいしかない足跡がとある方向へ伸びている。
洞窟。
ゲーム時代にはなかった場所。
心許ない装備ゆえに避けて探索をしていなかった。
しかし今は迷わずそこへ向かう。
何があるか分からないが、マシロが心配だ。
洞窟は薄暗くて冷気が漂っていた。
不気味な肌寒さ。
警戒しながら進んでいくと、間もなくして小さな背中を見つける。
良かった。
無事だったみたいだ。
ここは一つ、お灸を据えておかねば。
「マシロ。勝手に俺から離れたら危ないだろ」
しゃがんでいるマシロは俺に気づいた。
「かいがら、うごいたの」
「ん?」
マシロの足元には足の生えた貝殻がある。
「あー、ヤドカリか」
なるほど。
それを追って洞窟まで入ってしまったんだろう。
とにもかくにも――ここには居たくない。
不気味だからか、そう告げる直感。
ゲーム時代こういう場所には必ずと言っていいほど何かしらの危険があったのだ。
「それよりもっとビックリするのがあるぞ。俺くらいでかい魚を釣り上げた――」
マシロの興味を外へ向けようとする。
その時。
カタカタ、カタカタ、と音がした。
洞窟の奥からだ。
なんだ……?
身構える俺。
腰の長剣へ手を伸ば――
キィィィィッ!!
甲高い音が洞窟に鳴り響いた。
体が動かなくなる。
視界左端にあるHPゲージの下に「行動不能」のアイコンが表示された。
スタン系のスキル⁉︎
となればもう、ここに魔物がいるのは確定だ。
カタカタという音が近づく。
ユートピア・アイランド〜美少女たちと島開拓〜 ふにゃにゃ。 @hunyanya
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