10 海
というわけで翌日。
朝から西にある川辺へ向かう。
装備は相変わらず変わっていない。
ポイントはずっと貯金状態。
とはいえ10000くらいだ。
日用品やお風呂など家の設備に費やしているからな。
「おぉー、たかい!」
おんぶ状態にあるマシロ。
いつもより視線が高くて大興奮だ。
足場の悪いジャングルはさすがに危険だからな。
川辺に着いてから下ろす。
「なにあれ!」
マシロが川を指差す。
「川だよ」
「かわ」
「そうそう」
引き寄せられるように、マシロが川へ入っていく。
流れは穏やかだし危険はないだろう。
「おふろ?」
「みたいなものかな。でも冷たいだろ?」
「うん」
膝下まで川に浸かっている。
初めてみる光景に興味津々で、マシロは落ちていた葉っぱを川に置いた。
ゆるやかに流れていく。
「はっぱ、どこいくの?」
「海だよ」
「うみ。しってるー、しまのそとにあるやつ」
「そうそう」
だいぶ理解力があるみたいだな。
「でも、うみ、みたことない」
「お。なら海も行ってみるか」
「ん!」
予定変更。
海釣りにしよう。
今日はマシロがしたいことをする日だからな。
再びおんぶして、海へ向かう。
途中で魔物との遭遇が怖かったが、必ずと言っていいほど襲ってきていた麻痺猿と出会わなかった。
戦闘回数ゼロで浜辺に到着する。
これは仮説であるが、ひょっとしたら生態系ってやつがきちんとあるのかもしれない。
簡単に言うなら、麻痺猿を倒し過ぎて個体数が減ったという考えだ。
麻痺猿、絶滅危惧種説。
うーん……安全にはなるけど、魔石の稼ぎが悪くなるからな、ほどほどにした方がいいか。
「れいじ、おりたい! おりたい!」
思案に耽っていたら、マシロがジタバタ暴れ出した。
海を前に我慢できない様子。
「すまんすまん」
背中から下ろしてやる――というよりか飛び降りるような感じでマシロは着地すると、海へ向かって駆けていった。
「足速くなったなぁ……」
子供の成長って感慨深い。
「海には一人で入るなよー!」
注意だけして追いかける。
海も魔物が出るのだ。
浜辺近くでは出現しないものの、少し奥に行くだけでサメや巨大な海蛇みたいな魔物が出る。
泳ぎながら戦うと厄介だから相手にしたくはないな。
「うーみー!」
マシロが海水を短い足で蹴る。
ちゃぷちゃぷと水遊び。
「釣りするか?」
「うん!」
釣り竿は二本用意してあった。
マシロにやり方を教えながら釣りスタート。
いずれは自分で食料調達をしてもらいたいからな。
いろいろ教えていかねば。
「き、きたーっ」
マシロの釣竿がピクピク動いている。
園児くらいの体格では海に引っ張られてしまう。
すかさず背後から竿ごと支えてあげた。
釣り上げたのは小魚。
「ちっちゃい……」
残念そうなマシロ。
「れーじはもっとおおきいのつってた」
「必ず大きいのが釣れるわけじゃないさ。まだ時間はあるから次は大物狙おうな」
「ん」
マシロは少し不機嫌になった。
面白くない、といった顔つき。
まあこの歳の子に釣りの楽しみは分からないか。
一種のギャンブルみたいなもんだしな。
魚のサイズで一喜一憂するのもヒットするのを待つのも醍醐味なんだがな。
「かいがら!」
マシロはそのうち釣竿を手放し、砂浜にある貝に興味を移した。
初めて拠点から出たことだしな。
好きに過ごさせよう。
釣りに固執させる理由もない。
その後は思い思いに過ごした。
俺は釣りが好きだから大物狙ってひたすら我慢。
って――うぉっ⁉︎
きた!
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