09 成長

 家に入るとマシロが泣き喚いていた。


「どうした⁉︎」


 喋れない赤子は答えてくれない。


 どうしたもんかと焦っていたら、メッセージウィンドウで「オムツを交換してほしいようです」と出てきた。


 あー、そういうこと。


 言われてみれば、ちょっと臭うね。


 おむつ交換は初体験。


 どうにかこうにかやってあげた。


 子育てって大変だなぁ……。


 これをあと何百回、何千回ってしなくちゃなんだろ?


 腹を括れ、俺。


 ため息を堪え、笑顔になったマシロをベッドに残して料理に取りかかる。


 魚を焼いて、海水から作った塩を振って完成。


 シンプルだけど良い匂い。


 いただきます。


 うめぇ……。


 あっという間に一匹食べてしまった。


 二匹目も料理して、マシロ用に身を擦り潰してあげる。


 小皿に移し、スプーンと一緒に持っていった。


 小さな口に入れてやると不器用にモグモグする。


 ミルクも飲ませてあげた。


 マシロがとびっきりの笑顔になる。


 かわいい。


 こういう反応されると頑張れるよな。


 さてと。


 探索に出よう。


 リュックを背負い拠点を後にする。


 夜になるまで食料を集めながら麻痺猿で魔石を稼いだ。


 就寝。


 マシロの夜泣きで一度起きたが、どうにか寝かしつけて自分も眠った。


 翌日、異変に気づく。


「でかくなってないか?」


 マシロが成長していた。


 昨日よりも大きいし、髪の毛も伸びている。


 あうあうって言葉も発しているし。


 一日でここまでなるのはおかしい。


 目に見えて分かる成長っていうのは数日単位で気づくものじゃないのか?


 その違和感は間違ってなくて――


 翌日には這い這いをするようになり、その次の日には二足で歩けるようになっていた。


 早熟過ぎるだろ。


 数日後。


「えーじ」

「違う。レイジだ」

「れーじ?」

「そうそう。よく言えたな」

「やった♪」


 喋れるようになっていた。


 身長も伸び、幼稚園児くらいある。


 食事はミルクを卒業。


 好物はバナナ、焼き魚だ。


 マシロは成長が早いので、たくさん会話するようにしている。


 言葉を覚えさせるためだ。


 なるべく一緒に過ごし、お風呂も一緒だ。


 10000Pで家に設置したお風呂は6畳くらいで狭くはあるが、シャワーも浴槽もある。


 蛇口をひねったらお湯も水も出る。


 原理は分からん。


 コンソールさんが水道管工事してくれたんだろう。


 マシロと湯船に浸かっていると、


「おさんぽ、いきたい」


 キラキラした青い瞳で見つめられた。


「散歩か」


 マシロは拠点から出たことはない。


 外は危険だと言い聞かせ、探索中はずっと家で留守番させていた。


 成長とともに、外の世界にも興味を示したらしい。


 まあそろそろいいか。


 一人で歩けるようにもなったし。


 そうと決まればどこへ連れて行こうか。


 うーん、拠点に近い川辺かな。


 一緒に釣りでもしよう。


「いいぞー。なら明日行くか」

「ん!」

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