03 中ボス

 麻痺猿とエンカウントするってことは、ここは島東にあるエリアだ。


 しばらく歩くと景色が変わる。


 野菜や果物がそこら中に実る食料エリアになった。


 食べれる果実をもぎ取って齧ってみる。


 甘酸っぱくて美味い。


 リンゴみたいな味だ。


 拠点まではもうちょっと。


 とはいえ、ここも要注意だな……って、もういるじゃねえかよアイツ。


 長い長い体躯、大きな頭部頭部。


 大蛇だ。


 俺の何十倍、ひょっとすると何百倍もある。


 チロチロとした舌で果実を取って丸呑みにしている。


 食事中。


 見つかったらやべえ。


 静かに移動してやり過ごそう。


 初期装備の長剣一本で勝てる相手じゃねえからな。


 このユートピア・アイランドの世界はRPGでよくあるレベルという概念はない。


 武器とスキルが物を言う。


 強力な剣、ボウガンや、一定時間空を飛べる羽なんかもあったりする。


 スキルは魔法、索敵、透明化、テレポートとかだな。


 プレイスタイルを考えながらコンソールで自分を強化していくのだ。


 大蛇はボスキャラとして配置されており、ドラ◯エとかで言えば物語中盤くらいに登場する強敵。


 パキッ。


 あ、枝踏んだ。


 おのれ右足。


 大蛇の頭がこっちを向いた。


 目が合う。


 やべえ死ぬ……。


 俺は走った。


 当然、追ってくる大蛇。


 すげースピードで。


 ヤバいヤバいヤバい!


 背後に死の気配。


 巨大な体躯が木々をバキバキへし折りながら俺をロックオン中。


 来た道を戻っているのだが……当然、麻痺猿とエンカウントする。


 今お前と会うのは最悪だ!


 もし麻痺させられたら動けなくなって、たちまち大蛇の胃袋行きだ。


 ポケットにある魔石を適当に投げる。


 麻痺猿が俺に寄って来ないようするのだ。


 視界の端で麻痺猿が魔石に飛びついて拾い上げる。


 よし、魔石だけ見てろよ。


 追加でいくつか魔石を投げておく。


 稼ぎが減ってしまうが仕方ない。


 死んだらどうなるか分からねえからな。


 ちなみにゲームだと初期地に戻される。


 武器もスキルもリセット。


 何もかも最初からだ。


 まあ今の進行具合だったらそうなっても構わないが、生身でこの世界にいるゆえ――永遠の死ってことも考えられる。


 つーか大蛇に食われて痛い思いをするのは嫌だ。


 怖え!


 これがリアルな戦場か。


 ……ん?


 大蛇の気配が遠ざかっている。


 振り向くと、麻痺猿を食っていた。


 マジか!


 そして更に驚きなのが、しっかり麻痺していた。


 横たわる大蛇。


 ああなれば十秒くらいは動けない。


 チャンス!


 周り右してダッシュ。


 大蛇の横を通り過ぎて、今度こそコンソールへ――


 いや……待てよ?

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