第10話 熱戦
玉川 好「どうしてそうなったの...」
つい先程の出来事を説明すると、好達は困りきっている様子だった。
乳頭 慶「紫竹園店員も哀れだな...」
白神 恋「まさか俺の店に働きに来ただけで自分のクビをかけられるとは思わないしね。」
俺が紫竹園を経営しているのは帝都連合からの命令によってだ。
星川 星羅「で?勝算はある訳?」
白神 恋「一応。ハロウィンフェスだから、当日仮装するだろ?顔を隠していいわけだ。お前らにはあらかじめ大金渡しておくから、当日仮装を変えながらうちの食品を購入しまくってくれ。」
関口 一葉「ええ...」
仁涯 海斗「そ、そんなこと...」
白神 恋「手段を選んでいられないだろう。それに相手は平気で他人を恐喝する畜生だ。こんな方法で勝っても悔やまない。」
斑目さんについて何か知っているのなら、それについて興味あるしな。
乳頭 慶「一理あるな。だが相手は腹黒澤だ。向こうは向こうで何か裏技使って来るかもな。妨害するかもしれない。」
白神 恋「それはそう。北澤、何か黒澤から命令はあったか?」
北澤 神太「呼び捨てかよ...まあいい。特には無かった。そもそもあったとしてもお前に教えるかって話だが。」
星川 星羅「案外真っ向勝負で来るんじゃない?バカ真面目な一面もあるわよあいつ。」
白神 恋「それならいいな。確実に勝てる。」
ひとまず解散したあと、携帯が鳴った。田沢からだ。
田沢 良「恋、5日ほど前に会ったホームレス連中を覚えているか?」
白神 恋「ああ。ものすごく弱かったあの。」
田沢 良「あの中で、ガタイの大きい男は?」
白神 恋「覚えているぞ。確かあの中でリーダー格の男。」
田沢 良「そいつの名前は"敷間(しきのま)"だ。俺のホームレスネットワークの一端を占めている。」
白神 恋「なるほど。お前の部下だったのか。ところで、なんであの階に住み込んだかわかるか?あの時聞くの忘れてた。」
田沢 良「どうやら依頼によるものらしい。匿名だから誰かはわからないそうだが。」
白神 恋「依頼?」
田沢 良「特定のメンバーとあの部屋に住んで欲しいと。」
白神 恋「なるほど。お前によるものじゃなかったか。ん待てよ。あの時敷間てやつは事件当時に見計らっていたとか言ってたな。警察云々が居なくなってから依頼されたんじゃ?」
田沢 良「確かに。ますます匿名の人物が気になるな。あのホテルで事件が起こることを知っていた疑いがある。」
白神 恋「またその犯人なのかもしれない。所で、敷間は今どうしているんだ?」
田沢 良「事業再開に併せて追い出されたってよ。それで俺に泣きついてきた。今までホームレスだったんだから、またホームレスすればいいのに。」
白神 恋「1度手にした温かみを簡単に捨てられ無いんだろうな。それで、ほかの4人は?」
田沢 良「ほかの4人は知らん。」
白神 恋「知らない?」
田沢 良「少なくとも俺のネットワークとは関係ない人物だな。敷間も面識がないそうだ。」
白神 恋「何か臭うな...良的には果たして敷間は信用出来るのか?」
田沢 良「数千人のネットワークの1人に過ぎないからな。よく分からん。ただ少なくともあいつは事件当時店外からの状況に詳しかったんだろう?あいつの線は無さそうだが。」
白神 恋「それもそうか。」
田沢 良「とりま四人について調べてみる。何かわかったら伝えてくれ。」
白神 恋「ありがとうな。それじゃ。」
あのホームレスが関わってくるとはな。まあ確かにあいつらが犯人だった場合あそこにいた理由が監視だったら合点がいく。まさか俺ももうすでに目をつけられている,,,なんてな。
いよいよ31日晩、ハロウィンフェス改めあの「晴天屋」オーナー黒澤 聖との勝負が始まる。向こうもオーナー直々に取り仕切るらしい。
黒澤 聖「儂の店と勝負するとはな。おどれらの命運もここまでじゃ。」
自信満々のようだ。でも正直負ける気はしない。こちらには秘策があるのだから。
玉川 好「へ?おどれ”ら”??」
乳頭 慶「恋、大変だ。あらかた計画に乗ってくれそうな人をかき集めたが、皆全く金持ってない。」
白神 恋「なんだと。」
思わぬ誤算。この代々木にはかなりの客が集まってくる。総勢1万を超えることも珍しくない。一方、乗ってくれたお三方はどうやら30人程度。しかもお金なしとなると。
乳頭 慶「個数で勝負するのはどうだ?」
白神 恋「それだ!」
まだ明確なレギュレーションは決めていない。とにかく量を少なくして安くすればいい。黒澤に個数で勝負する旨を伝えに行くと、
黒澤 聖「それじゃあ、お互い同じ量で同じ値段にしようや。」
と暴論(正しいけども)で返された。ちょうど相手も丼で対抗するらしいし、都合が良かったのかもしれない(こちらは姑息な手段を選んでいたので納得いかないが)。
仁涯 海斗「どのメニューで行くんですか?」
白神 恋「チャーシュー丼にする。」
玉川 好「美味しそ〜。イベリコ?」
白神 恋「いや、黒豚だ。故郷支援という名目でやってるからな。」
星川 星羅「ところで、恋が直接調理するの?」
白神 恋「まあね。実質店長みたいな所あるし。何より今は賭けに出ているし、それに巻き込まれた形の部下に任せるのは気の毒だろうし。」
星川 星羅「ふーん...」
玉川 好「楽しみねぇ。できる限り食べてみせるから!」
白神 恋「期待してるぞ...知名度ないから、俺の腕より重要かもしれないからな。」
午後7時フェスには始まりの合図などはなく、紫竹園と晴天屋が早めに開店する形で勝負が始まった。
白神 恋「うへぇ。まだ繁忙期じゃないはずなのに忙しい。8時で一旦休みたい...」
紫竹園店員1「その時こそオーナー店長にいてもらわなきゃ困ります...。」
大した宣伝はしていなかったが、紫竹園自体はそこそこの料理店なのである程度のカスタマーを獲得した。しかしまだ心もとない。
乳頭 慶「ちょいちょい。皿を灰皿代わりにするな。あとこので吸うな。」
関口 一葉「...あ〜はいはい...。」
晴天屋に負けたら一応公務員の体なのに雇用切られそうなので、何らかのアドバンテージが欲しい。すると、
田沢 良「よう。あ、忙しそうだな。今無理。」
珍しく田沢が外出していた。
白神 恋「いや、話してもいいぞ。どうかしたのか良?」
田沢 良「焦っている様子だな恋。」
白神 恋「そりゃそうだろう。帝都連合から解雇されれば斑目さんとの繋がりが消え、それが愛が入院している病院との繋がりも断ってしまう。ちなみにお前も危なそう。」
田沢 良「げ、まじか。いやまあそんな予感はしていたが。まあでも安心していいと思うぞ。そんな隊員30人に託すなんて馬鹿なことを考えなくても、天命はきっとお前の方に来るさ。」
白神 恋「急にファンタジックな考えに...。まあそう考えていないとやっていられないが。実際今は負けた時の対処を考えているが。」
田沢 良「ていうのは冗談だ。しかし...そろそろ来るかな?」
さっきからこの小男はなんの事を言っているのかと思った瞬間、突如として謎の集団が現れた。ホームレスの仮装か?見た目はそんなにお金を持っていなそうだが、何より数が多い。そして、
紫竹園店員2「ふわぁ!?オーナー!いつの間にか人がこんなに!?」
この紫竹園の屋台に一斉に並んだ。
玉川 好「ちょなにー!?この人だかり!」
星川 星羅「おかわりしたかったのに(;;)」
黒澤 聖「なんじゃと!?小癪な!!」
田沢 良「やったな!これで一気に差が広がるだろう!やっぱりお前は持ってるんだ!」
白神 恋「休憩...休憩...」
午前0:00、疲れすぎて代々木公園で休んでいたところだった。
白神 恋「良、別に俺は正規の手段に拘っていない。だから教えて欲しいんだが、あの集団は歌舞伎町から来たホームレス達だろう?」
田沢 良「なんの事かさっぱりだ。」
白神 恋「...」
まあとりあえずこれで解雇の線は無くなったし。まずは斑目さんの現況について聞いてみるか。
白神 恋「黒澤。何やら斑目さんについて知っているような口ぶりだが、何か知っているのか?」
黒澤 聖「知ってるも何も、斑目の奴は儂にしか連絡してん。」
白神 恋「黒澤にしか?まあでもお前らは帝都連合の中の大幹部だし。その中でしかやり取り出来ないこともあるのか。」
黒澤 聖「話が早くて助かる。」
白神 恋「でもこっちは雇用を賭けて挑んだんだ。せめて何してるかだけ聞けないか?」
黒澤 聖「何してるか...まあ、大したことはしてあらへん。今んところ蛇竜の統帥に日本からの撤退を勧告しに行っとるわ。」
白神 恋「それだけか?それなら帝都連合の誰かにでも連絡してもいい気がするが。」
黒澤 聖「儂にもよくわからん。ただ、少なくとも今生きていることは間違いない。」
白神 恋「そうか...。ところで、この間NYの頭目と会ったんだが、その時直接は名指ししなかったが、斑目と面識あるような口ぶりだった。何か知っているか?」
黒澤 聖「NY...?そいや最近聞かなくなったな...いや何も知らんわ。あったとして、何するか想像もつかん。」
白神 恋「そうか。」
正直期待していなかったが、ひとまず斑目さんが生きていることの言質はとれたので満足だった。
白神 恋「あいたたたた!!今日は一日中寝よう...そう言えばもう11月になったのか...。」
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