オーバードーズ

第5話 灰の中の真実

　中神 恋は目の前の赤塚 神太郎を冷静に見つめていた。ルミノヴェルムが身体に覚醒をもたらし、彼の動きは瞬時に鋭くなる。赤塚もまた、ルミノヴェルムの主作用が覚醒し、その全身に力が漲っているのを感じていた。

赤塚 神太郎「…お前、やるじゃねぇか。」

　赤塚の目が鋭く光り、次の瞬間、二人は一気に間合いを詰めた。中神の拳が赤塚の顔に飛び、赤塚はすかさず回避する。彼は拳を振りかざして反撃し、強烈なキックを中神に叩き込む。しかし、中神はそれを受け流し、素早く回転して赤塚に背後から攻撃を仕掛ける。

　殴り、蹴り、激しい白兵戦が繰り広げられる。しかし、次第に赤塚が追い込まれ、汗と血が混じる戦いとなる。

赤塚 神太郎「くっ…！」

　赤塚は辛うじて踏みとどまっていたが、明らかに疲労が溜まっている。その瞬間、赤塚は深く息を吸い、目を閉じた。そして、赤塚の体から闘気が漲り、彼のオーバーアビリティ「オーバーアーマー」が発動する。瞬時に、彼の体を取り囲むかのように黒いエネルギーが固まっていき、まるで鉄の鎧をまとったかのように硬化する。

赤塚 神太郎「…これでどうだ。」

　中神の攻撃がオーバーアーマーに当たるが、何も効かない。拳が空気を切り裂くだけで、赤塚に一切のダメージを与えられない。

中神 恋「…なるほど。」

　中神は冷静に観察し、無駄な攻撃を止めると、右手を掲げた。その瞬間、彼の右手から一条の波動が炸裂する。「オーバーウェイブ」だ。波動がオーバーアーマーをすり抜け、赤塚を直撃する。

　赤塚はその波動を受けても、意外にも耐えることができた。だが、その顔には苦痛の色が浮かぶ。

「行くぞぉぉぉぉ！！！」

　赤塚は意を決して中神へと猛烈に反撃を開始する。拳が唸り、蹴りが風を切る。しかし中神もまた、赤塚の猛攻に耐え、すぐに反応して動き回る。

だが、赤塚の攻撃に一瞬の隙が生まれた。

　その隙を見逃さなかった中神は、再び右手を掲げて波動を炸裂させた。今度は、赤塚の体に完全に直撃する。

中神 恋「…これで終わりだ！」

　赤塚の体は激しく震え、力を失っていく。彼はその場に膝をつき、顔を歪めながらも何とか立ち上がることはできなかった。しかし、死にはしない。中神はそれを見越して、決して致命傷を与えることはなかった。

赤塚 神太郎「！！？？」

　赤塚は信じられないような表情を浮かべた。彼は長期間にわたってルミノヴェルムを使用し、東経連合を上り詰めたエリートなので、こんなにあっさり負けて驚いても無理はない。

赤塚はばったりと倒れ込んだ。しばらく起き上がれないだろう。

周囲「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ！！！」

一同は一斉に盛り上がった。中にはすでに帰ってきていた好の姿もあった。

国分寺 好「おめでとう！」

純粋に褒めてくれるもの。

国立 慶「おかげでスッキリした！」

赤塚に嫌気が差していたもの。

？？？「ありがとう！」

何故か感謝するもの。

？？？「お前に賭ければ良かった！でもおめでとう！」

どうやら対決の裏でトトカルチョをやっていたらしいものがいた。

佐々木 宗真「な、なんて恐ろしい会社なんだ…」

大阪清涼さん、誤解させてしまって申し訳ございません…。

その後、千石 劉が帰ってきたので、経緯を説明した。

千石 劉「そうか…そんな事があったのか。」

白神 恋「全く…千石さん達がいれば。」

西武 壮太「すまない。しかし、奴にはいい薬になったんじゃないか？これで当分は大人しくなるだろう。」

千石 劉「そうだな。」

白神 恋「…」

何か怪しいな。もしかしてこの状況を狙っていなくなったんじゃないかと思える。まあ個人的な因縁で奴を懲らしめられてスッキリしたが。

本日の任務を全て終えたあと、代々木公園を去ろうとした時、良から着信が来た。

拝島 良「やあ恋、激闘だったな。それにしても、本当にお前は小さい方なんだな。」

中神 恋「だからお前が小さすぎるだけなんだって。それで、もしかして昼に頼んでたやつか？」

田沢 良「ああ、かなり苦戦させられた。なんせ…1日中閉じこもっていたからな。」

中神 恋「そうだったのか…」

拝島 良「今、警察に連絡したところだ。お前も容態を確認してきたらどうだ？場所はSKYSUTAR TOKYOというホテルだ。新歌舞伎町タワーに付属している。」

中神 恋「ああ…うん？」

警察？容態？歌舞伎町？色々な疑問が浮かび上がったが、とりあえず向かってみる。

新宿駅から降りて直行してみると、新歌舞伎町タワーで火災があった様子だった。

中神 恋｢一体何があったんだ！？｣

周りの野次を押しのけて付近に到着、警察に事情を説明し、通してもらった。

警官｢遺体は、すでに救急搬送されました。外傷の後も残っていたようです。｣

中神 恋｢加害者は殺害した後、すぐに放火したのか？｣

警官｢それはわかりません。加害者と思われる人物もまだ特定に至っていませんし。｣

現場に行ってみると、大量の焼けた紙のようなものが散逸していた。よく見ると、お札だ。しかも1万円札。これが大量に消失したということなのか。

中神 恋｢1万円札自体は製造のコストは大したことないけどな…｣

警官｢身元が特定したようです。やはり｢飯野 走｣という人物のようです。推定時刻は直近だそうで。｣

中神 恋｢ということは、殺害直後放火、放火殺人で間違いないということか。｣

渋谷といい歌舞伎町といい、一体何が起こっていると言うのだ？