第683話

永遠に続くかと思われる洞窟をクロードは歩く。

洞窟にはルーン文字が刻まれている。

これを施したのは腕のいい魔術師だ。

ルーン文字のおかげで魔界から魔物が溢れでないのだ。

だが、このルーン文字の効果もいつ崩壊してもおかしくない。

それを示すようにルーン文字は激しく明滅を繰り返している。

急がなければ魔界が崩壊してしまう。

魔界が崩壊すれば隣接する人間界も巻き込まれるだろう。

洞窟を抜けるとどこまで続くかわからない荒野に出た。

そこに1人の人物が待ち受けていた。

魔界の主であるロキである。

「悪いな。本当はもっと早く迎えに来たかったんだが糞爺の影響がでかくてな」

「いえ。それで、魔界の状況はどうなっていますか?」

「崩壊のぎりぎり寸前だ。どうにかできるのか?」

「絶対に大丈夫とは言えません。でも、可能性はあります」

「そうか。俺の居城まで一気に飛ぶぞ」

「はい」

ロキがクロードに触れると景色が一瞬で切り替わる。

ロキの力で転移したのだ。

目の前に広がるのはでかいがボロボロの城だった。

「魔界の主だった者を集めている。こっちだ」

ロキはそう言って城の中に入る。

「ロキ様。やはり人の手を借りるの反対です」

「そうです。我々は人のせいで煮え湯を飲まされてきたというのに・・・」

「皆の気持ちもわからなくはない。だが、こいつは人なんかじゃない」

「それはどういう・・・?」

「偉大なる聖母と我ら魔に連なる者の偉大なる父、破壊神様の息子である最古の神殺しだ」

「なんと・・・?」

ここでクロードは一同を見回してから口を開く。

「まずは謝罪を。僕には人として暮らしていた記憶があります。人の繁栄と引き換えに皆さんが苦しんでいた。そのことを謝罪させてください」

「あなたのせいでは・・。それにここには人を恨んでいる者などございません。そのように世界を創ったオーディンこそが元凶です」

ここに集まった魔人達は全員頷いている。

「ありがとうございます。皆さんに是非協力してほしいことがあります」

「なんでしょうか?」

クロードはまとめておいた魔方陣の書かれた紙を取り出す。

「これは?」

「日本神話の天照大神が編み出した効率のいい転換陣です。これを魔界の各地に刻んでください」

「刻むのは構いません。ですが、転換された魔力は我々には毒になります。その処理をどうするのでしょうか?」

「疑問に思うのも当然です。本来であれば世界に還元させるのですが現状は難しい。なので、一時的に僕が引き受けます」

「おいおい。そんなことをしてお前は大丈夫なのか?」

ロキは心配そうにそう言ってくる。

「短期間であれば大丈夫でしょう。その前にオーディンをなんとかします」

「はぁ・・・。知り合いからは無茶苦茶する奴だと聞いていたが噂以上だな」

「あはは・・・」

「魔界が落ち着けば我々も力になろう。というか、本来であればこれは私がやらなければならないことだ」

「と、いうと?」

「奴はラグナロクを宣言したがこれはあくまで北欧神話の問題だ。他所の神であるお前には関係のない話だ」

「まぁ、喧嘩を売られたのは僕ですから。最後まで責任を持ちますよ」

「そうか・・・。お前達。分担してすぐに作業にはいってくれ」

「はっはっ。我らが主の命じるままに」

ロキとクロードは散っていく魔人達を眺めていた。

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