第546話

「あぁ。ロキのことを君は勘違いしているんだね」


「勘違いですか」


「遊び感覚で人間の世界をひっかきまわしているように見えてあれはあれで役目を果たしているだけだよ」


「役目ですか・・・」


「確かに人から見れば災厄を起こしているように見えるだろう。でも、人を強くするための試練を与える。そういう役目を持って生まれてきたのさ」


「はた迷惑な役目ですね」


「他の神々も似たようなものだよ。例えば北欧の主神オーディン。彼は争いの神だ。人の戦争を喜び楽しんでいる。その中に英雄なんて呼ばれた存在がいれば死後に勧誘して私兵に加えていたりする。君は既に彼の中では私兵に加える候補だろうね」


「死後にどうなるかなんて今は考えるだけ無駄にも思えますけど」


「そもそも、君はこの世界についておかしいとは思わなかったのかな」


「おかしいですか・・・」


「そう。君がいた元の世界でゲームと呼ばれた遊びに似すぎているだろう。あれはこの世界を元に神々が運営している」


「なんだかスケールが大きくなりましたね」


「あれはこの世界に適応する人を選別するふるいだよ。君は適応率が高すぎて扱いに困った結果、天災という形で命を奪われたようだけどね」


「どうしてそんなことがわかるんですか」


「精霊王様もそうだけど他の神々も遍在しているからだよ。君たちは元の世界で精霊を知覚できていないだろうけど精霊は存在して役目を果たしている。精霊王様に集められない情報はないってことだね」


「ならば、エルフや他の種族も存在していてもおかしくないですけど」


「存在はしているよ。ただ、人の前に姿を現さなくなったというだけのことさ。話を戻そう。君は与えられた役目であるロキ討伐を本当にするのかい」


「身近な人に危険が及ばないようにしたいんです」


「そうか。意思は固いか。というより君の魂に・・・」


「イフさん。1ついいですか。世界の秘密をそんなに喋って大丈夫なんですか。どう考えても人が知るべきことでないことを喋っていたようですけど」


「あぁ。この世界樹は異界だからね。精霊王様には筒抜けだけど他の神々には知られないよ。決めた。私も君についていく。何か力になれることもあるかもしれないからね」


「役目を放りだしていいんですか」


「私はもう長じゃないからね。後任に引き継いできた。今の私は少々力の強いハイエルフさ」


「はぁ・・・。断ってもダメそうですね。これからよろしくお願いします」


「こちらこそ」


こうしてクロードとイフは新たな関係を築いた。

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