第547話
イフは魔物の討伐には参加しなかったが戦いやすい環境を整えてくれた。
イフリートの力で熱量を操作して暑さを和らげてくれている。
イフリート本人はこんなことに力を使わされるとはと苦言を申していたがありがたいことには違いない。
「いやぁ・・・。それにしてもクロード君強いね。かつての勇者を彷彿させる剣技に精霊達の扱い方も悪くない」
「かつての勇者ですか・・・。興味がありますね」
「君の剣技の根底にあるのは勇者がかつて編み出した技術だ。そこから発展していったものだろうね」
クロードの扱う剣技はカリオンが教えてくれたものだ。
かつて勇者が生み出しそして脈々と受け継がれたものであるならばそれはそれで重みのあることだ。
「かつての勇者もロキ討伐を掲げていたけれど志半ばで倒れた。弟子達は各地に散り魔界に戦いを挑んだ。第一次人魔大戦だ」
「第一次人魔大戦・・・。初めて聞く名前です」
各国の歴史書を読み漁ったクロードでさえ聞いたことのない名だ。
「それはそうだろうね。人は人魔大戦が終わった後、利権を争って人同士で大戦争をはじめた。あの混乱で多くの歴史が失われたのは間違いない」
「それにしても人の世界に造詣が深いのですね」
「それはそうさ。今みたいにエルフの社会も閉鎖的だったわけじゃない。かつてはエルフの多くが世界樹を出て人の世界で生活していた。そんな時期もあったのさ」
「今の世界からは想像もできませんね」
「エルフは長命で美しい。人の欲望というのは怖いものでね。不老長寿を求めて被害にあうエルフが大勢出た。そして、エルフは次第に世界樹の外に出るのを辞めてしまった」
「確かに人というのは欲深い生き物ですからね」
短い今世ではあるけれど人の欲というものは少なからず見てきた。
自分の利益をとことん求め他者の痛みをわかろうとしない輩もいるだろう。
「イフさんは人は嫌いですか」
「基本的には嫌いだね。だけど、いい思い出もある。だから、見捨てられないのだろうね」
「それを聞いて安心しました」
イフは長い時間を生きてきたハイエルフだ。
そこには様々な感情が渦巻いているのだろう。
クロードは魔物を討伐する手を休めずに戦いながらも考える。
世界の為に精霊を育てそれを延々とこなしてきたハイエルフにエルフ達。
この世界は彼等なしでは崩壊してしまうのではないだろうか。
もう一度エルフやハイエルフ達が外の世界に興味を持ってくれたらよいなと漠然としながらもそう思ってしまった。
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