第503話

「正直に言えば保守的過ぎる里の者達が私は嫌いなのだ」


イケメンのエルフの青年はそう言って口火をきった。


「保守的ですか」


「我らエルフは世界樹を守っていると言えば聞こえばいいが与えられた環境に甘えているだけだ」


世界樹の第1層から第10層は食糧庫だ。


安全に食料を得られる環境なために依存しているとも捉えることが出来る。


それは悪いことではないと思うが彼からすると嫌悪すべき出来事のようだ。


「最近のエルフは世界樹から食料を得るだけで精霊様と共に成長しようとしない腑抜けばかりだ」


クロードも多くの精霊と関わることで感じていた部分だった。


特殊な属性の精霊はしかたないにしても4大属性の精霊すら長い期間、停滞の中にいた。


人と同じように成長することが出来る精霊達は本来であればエルフと共に成長して格をあげていくのが普通なのだろう。


「貴方には他のエルフ達とは違う世界が見えているのですね」


興味深く思いそう質問する。


「精霊様達は世界のバランスを司るバランサーだ。それが崩れれば大きな災いが起きるだろう」


精霊達は世界樹が取り込んだ魔力を拡散する役目を負っている。


今は過去のエルフ達が育てた精霊達で補えているがこのまま放置していれば自然災害や天変地異など何が起きるかわからない事態となるだろう。


「回避する方法はあるのですか」


「我々には地道に精霊様と成長するしかない。ハイエルフの方々も手を打ってくださっているが里のエルフ達は危機意識が欠けている」


本来、ハイエルフは500層までエルフが育てた精霊を受け取り上層を目指すものだが現在は下層に出向き精霊の成長を促している。


しかし、ハイエルフの数はエルフ達以上に数が少ない。


現状では手が足りていない状況だ。


そんな時に複数の精霊と相性の良いクロードがやってきたのだ。


上手く導けば状況を好転させることが可能だった。


まんまと利用された形ではあるがクロードにも利があることではあったのだ。


まず、精霊の目を手に入れたこと。


これだけでも利点は大きいが精霊達と触れ合ったことで改めて魔法について考えさせられたこと。


当たり前のように魔法を使っていたが基礎となる部分を見直したことで魔法の威力は勿論のことより効率よく使えるようになったことで燃費も改善されている。


邪神ロキとの差を考えれば雀の涙程度の違いでしかないがそれでも1歩近づけたのは間違いない。


千里の道も一歩からとはよく言ったものである。

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