第484話
「さて、話はこれぐらいにして御飯にでもしよう」
そういってイフはアイテムボックスから果物を次々と取り出していく。
クロードが虜囚の身となって食べていた物とは違い世界樹の500層から採れる物が並べられていく。
ただの果物と思うなかれ。
世界樹500層から採れる果物は食べると一定期間バフがかかるのだ。
ゲーム時代はボスに挑む前にこの果物でブーストするのが普通だった。
クロードのアイテムボックスにも当然保管されているのだが使う程の状況に追い詰められたことがなかった。
「さぁさぁ。遠慮せず食べてくれ」
クロードからすれば普通の食事でこれらの果物を食べるのは気が引けるのだがここで遠慮するのも不自然だろう。
「いただきます」
クロードがまず手につけたのは生命の林檎と呼ばれる体力に補正のかかる林檎だ。
噛めば蜜が溢れてきて極上の甘味を伝えてくる。
あまりの美味しさにクロードは次の果物に手を伸ばしていた。
次に手を伸ばしたのは魔力に補正のかかる葡萄だ。
皮は驚くほど薄く今にも破れそうだ。
口にそのまま放り込めば葡萄の豊潤な旨味が口中に広がる。
「ふふ。どうやら気に入ってくれたみたいだね」
「どれも美味しくてどう表現したらいいのか」
「私達、ハイエルフにとっては当たり前の物だけどそれだけ喜んでくれるなら提供した甲斐があったね」
そういってイフも果物に手をつけた。
十分にクロードが果物を食べたのを確認してイフが話しかけてくる。
「さて、腹ごなしも終えたことだし今日のところはゆっくり休んでくれ」
「わかりました」
寝る時間は十分あったがやはり籠の中では疲労が抜けきらずこの申し出はありがたい。
クロードは与えられた部屋で横になるとすぅっと眠りに落ちていく。
クロードは夢を見ていた。
夢の中ではエリーゼが鬼の魔物を相手に上級生と思われる人達と共に修行に励んでいた。
エリーゼの実力は最後に見た時よりも洗練されており危なげなく戦っている。
鬼の魔物を倒したエリーゼがこちらを見たような気がした。
世界樹は危険な場所だ。
そこにエリーゼを連れてくるわけにはいかなかったが会うこともせず置いてきてしまったことに罪悪感を覚える自分がいる。
思えばエリーゼとここまで長期で会わないということはなかった。。
ゲルマン王国は魔物の処理をうまく行っているが他の国々はそういうわけではない。
どこかの国が対応を誤り倒れれば溢れた魔物がゲルマン王国の近隣の国に襲い掛かりそれはいずれ無視できない状況にゲルマン王国も巻き込まれるだろう。
邪神ロキをうち倒して最愛の人であるエリーゼの笑顔を守れるだろうか。
どれだけの時間が残されているかはわからないが修行の旅を急ぎ必ず精霊王の協力を得て国元に帰らなければと強く思うのであった。
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