第483話

イフに案内されたのは世界樹の麓に近い大きな住居だった。


「ここはハイエルフ達が何かで下のエルフ達の元に降りてきた際、住む家なんだ」


「ハイエルフとエルフの関係ってどうなんですか」


「基本的には無干渉かな。今回みたいに対応に困った場合には相談に乗るけどね」


「ご迷惑をおかけしてすみません」


「いやいや。迷惑だなんて思っていないよ。生活に困ることはないけど代り映えのしない日々。そこに君がやってきた」


「面白がっていませんか」


「君がこの地で何をしでかしてくれるのか楽しみにしているのは否定しないかな」


「精霊王からは多くの精霊と契約しろって言われたんですけどどうしたらいいんですか」


「君は精霊に好かれる体質のようだけど精霊を見ることはできないんだね」


「精霊を見るですか」


「私達、ハイエルフは生まれた時から精霊が見えて声を聞くことができるけどエルフ達は全員が全員それが出来るわけではないんだ」


「精霊が見えなかったり声が聞こえないエルフはどうするんですか」


「素質もあるけど大抵のエルフは後天的にその力を手にすることが出来る。精霊に好かれる体質の君も得ることができるんじゃないかな」


「どうしたらいいんですか」


「世界樹の1層の中央に精霊の泉という泉があるんだ。精霊の泉で自身の魔力と泉の魔力を同調させることで精霊と交信しやすくなるんだ」


「それって秘密だったりするんじゃないですか」


「う~ん。エルフ達なら誰でも知っていることだし精霊王様は君のことをかなり気に入っているみたいだからね」


「気に入られているんですか」


「そうじゃなきゃ直接君に話しかけたりしないだろうね。ところで君は精霊についてどの程度の知識があるのかな」


「4大精霊の火、水、土、風。それから雷や光に闇とかですかね」


「うんうん。間違ってはいないけれどそれじゃ不足かな。精霊は色々な物に宿るんだ。例えばこの机とかね」


「机にですか」


「大事に扱ってくれれば物も嬉しいし所有者に少しでも恩返しがしたいのさ」


「そう聞くと精霊ってどこにでもいるんですね」


「自然界にいる精霊と違って動けたりはしないから特殊な精霊だけどもね」


「そうなんですね。ちなみにこの剣にも精霊が宿っていたりしますか」


そういってクロードがアイテムボックスから取り出したのは父であるファイネルが贈ってくれた剣である。


「まだ芽生えて間もないみたいだけど精霊が宿っているね。余程大切にしているものなのかな」


「父から贈られた宝物なんですよ」


そう言って剣の柄を優しく撫でるのだった。

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