第471話
「おいおい。その槍どこから出てきたんだ」
「アイテムボックスからですけど」
アイテムボックスという名がでた瞬間、若者達の態度が変わる。
「あんた。いや、貴方様は貴族と関りがあるんですか」
「なんですか、それ」
「この国じゃアイテムボックス持ちは貴族に召し抱えられるのが普通なんだ」
「確かに貴族ではありますがこの国の人間じゃないですからね」
「そうか。この国の人じゃないのか・・・。って、やっぱ貴族なんじゃねぇか」
「今は一冒険者ですから気にしないでください」
「はぁ・・・。それで俺達はどうしたらいいんだ」
「皆さんには自衛出来るように槍の扱い方を学んでもらいます」
「剣じゃダメなのか」
「確かに剣のほうが応用が効きますがその分覚えなければいけないことが増えます。短期間で身に着けるなら槍の方がお勧めなんですよ」
「そういうならわかったよ」
「まずは手本を見せますので同じように突いてください」
クロードは槍を全員に手渡してから槍を構えて基本的な突きの動作をする。
かなり手加減をされた突きではあるが完璧なその動作は芸術的ですらあった。
「こんな感じです。最初はゆっくりで構いません。しかし、槍を戻す動作は素早く行ってください」
「わかった」
若者達はそれぞれ槍を構え突きの動作を繰り返す。
クロードも監督しながら彼等のペースに合わせて手本を見せるように突きの動作を繰り返した。
クロードが年下であることもあったのだろうが彼等は不平を言うことなくひたすら突きの動作だけを愚直に繰り返す。
普段から農作業や力仕事をしているだけあって体力があるだろうと思っていたが慣れない動作は疲れるものだ。
クロードは訓練の様子を眺めながら休憩を挟みつつもギリギリまで追い込んでいく。
結局、訓練は夕暮れまで続き若者達はヘトヘトである。
「お疲れ様でした。皆さんは見込みがありますよ。頑張って訓練を続ければ一流の兵士になれますよ」
「いや、俺ら農民だから」
「あはは。それだけ元気があれば大丈夫ですね」
「俺らにつきあってあんだけ槍振り回してたのにお前はどんだけ体力あるんだよ」
「年季の違いですかね。それはそうとこれをどうぞ」
クロードは人数分のチョコレートを取り出して配布する。
「みたことねぇけどなんなんだ」
「チョコレートというお菓子です。疲れた体に甘いものは効きますよ」
「へぇ。それじゃ早速」
そういって若者の一人がチョコレートを口にする。
「あめぇ。こんな甘い物食べたのはじめてだ」
そう言って満面の笑みを浮かべるのだった。
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