第441話

「お前が持っているのはなんだ」


「ゲルマン王国の貴族を名乗る餓鬼から取り上げた偽証の証拠です」


「念のためだ。紋章官に確認を取っておけ」


「隊長も心配性ですね」


「規則だからな。少しでも可能性は潰しておくに越したことはない」


「それでは行ってまいります」




クロードを担当した男は紋章官の詰める役所へと赴いていた。


「すまないがこれの真偽を確かめてくれ」


「わかりました。少々お待ちください」


紋章官の事務方の男はそう言って奥へと入っていく。


しばらく待っていると紋章官が慌ててやってくる。


「これを持ち込んだのは貴方ですか」


「そうだが何か問題でもあったのか」


「こちらについてはわかりませんでしたが問題はこちらです」


紋章官が示しているのはゲルマン王国の貴族を名乗る餓鬼が陛下から貰ったという徽章の方だった。


「それが何だというのだ・・・」


「これは竜徽章です。これを持つ者は陛下と同等の発言力を有するのです」


「陛下と同じ発言力だと」


「これを持っていた方はどうしていますか」


「屯所で拘留中だ」


「何がどうしてそうなったかはわかりませんがそれはまずいのでは」


「これが偽物という線はないのか」


「間違いなく本物です。私はこれから王宮に確認に行きますが貴方はどうしますか」


「私は屯所に戻る」


「わかりました」


そう告げる紋章官からは同情のような視線を受けるのだった。




急ぎ屯所に戻った私は隊長に報告をしていた。


「どうだった」


「紋章官が言うには本物とのことでした。そしてまずいことになりました」


「具体的にはどうまずい」


「竜徽章とのことで所持者は陛下と同等の発言力を有するとのことです」


「持っていた者は今どうしている」


「取調室に拘留中です」


「すぐに応接室にお通ししろ」


「はい」




「失礼しました。どうかこちらへおいでください」


取り調べの時とは打って変わって低姿勢の男が部屋にやってくる。


何が何やらわからないが3人は応接室に通されていた。


「一体何があったのでしょうね」


「僕にも何が何やら」


「とにかく相手の出方を伺うしかないですね」




「どうだった」


「とりあえず気分を害している様子はなさそうです」


「紋章官は王宮に向かったのだったな」


「はい」


「とにかくこれ以上の失態はまずい」


「わかっております」


捕らえた相手が思った以上の大物で自分達は失態を犯した。


王宮からは当然叱責があるだろう。


そのことを考えると胃がキリキリと痛むが今はそんなことを言っている場合ではなかった。

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