第440話

「ふぅ・・・。少々困ったことになりましたね」


「ここはゲルマン王国じゃないものね」


クロードとエリーゼの周囲には二人を攫おうとした人攫い達が倒れていた。


クロードが囲まれていることに気づきオリジナル魔法であるライトニングボルトで気絶させたのである。


「クロード様。私がついていながら申し訳ありません」


「不可抗力という奴でしょう」


問題は気絶させた人攫い達をどうするかだ。


ゲルマン王国なら街の警備をしている衛兵に引き渡せば済む話ではあるがドラゴニア王国にはお忍びでやってきている。


ゲルマン王国の貴族証はあるがドラゴニア王国で通用するか賭けになってしまう。


そうなると身分を証明するものが竜勲章ぐらいしかないのが現状だ。




しばらく待っているとドラゴニアの衛兵達がやってくる。


衛兵達のクロード達に向ける目線は厳しいものがあった。


「これをやったのはお前達か」


「えぇ。危害を加えられそうになりましたので」


「事情は屯所で聞こう」


捕縛まではされなかったが周囲を衛兵に囲まれ屯所まで連行されることとなった。


カリオンは苦言を言っていたが衛兵達は聞きいれるつもりがないようだった。




屯所に到着するとそれぞれ別室に通される。


「まずは名前を聞こうか」


「クロード・フォン・プロミネンスです」


「貴族の子供か。聞かない家名だな」


「ゲルマン王国の貴族ですから」


「外国の貴族か。それを証明する物は何か持っていないのか」


クロードは懐から辺境伯の貴族証を取り出す。


「これが辺境伯としての貴族証になります」


「はぁ・・・。正直これが本物かどうか我々には判断できん」


「なら、これではどうでしょうか」


クロードは再び懐に手を入れて竜勲章を取り出す。


「これは」


「ドラゴニアの女王陛下から貰った物になります」


「何を言い出すかと思えば馬鹿馬鹿しい。陛下からなんて嘘をつくな」


「王宮に確認を取ってもらえば虚偽を言ってるかどうかわかると思いますよ」


「もういい。黙っていろ。これは虚偽の申請の証明として預かっておくぞ」


そう言ってクロードを担当している男は貴族証と竜勲章を持って出ていった。




「お。聞き込み調査は終わったのか」


「ゲルマン王国の貴族を名乗っているが怪しいもんだ」


「こっちは王族だぜ」


「こっちのは護衛だとさ」


「それでお前、手に何持ってるんだ」


「虚偽の証拠さ。陛下から下賜されたなんて嘘をつくんだぜ」


「仮にもゲルマン王国の貴族を名乗っててそれはないだろ」


「まったくだ」


しかし、後々このことが大問題になることなどこの時、衛兵達は思ってもいなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る