第390話
予想通りというべきか森の奥に転移門が設置されていた。
クロードは周辺の魔物を討伐してから転移門の動作を停止させる。
予想外だったのは周辺の領主達が迅速に援軍を送り込んでくれたことだ。
自分達も余力はあまりないはずだがこれによって包囲網は分厚くなり魔物に突破される危険性はぐっと下がった。
クロードは転移門から溢れ出た魔物の討伐は兵士達に任せて次の転移門を止めるべく動いていた。
その様子を配下の魔人の目を通してロキは眺めていた。
「完全に北に誘引したと思ったけどずいぶんと早いお帰りだね」
「主様。感心している場合ではありません。奴のせいでどれだけの同胞が散っていったか」
「オーディンの爺もあれほどの者を手配するとは中々やるものだね」
「親父殿。儂にあの小僧の相手をさせてはくれないか」
「ヨルムンガンドか。お前が出ては地上世界への影響が大きすぎる」
「人間などどうなろうと関係ないではないですか」
「勘違いしてもらっては困るな。これはあくまで遊戯なんだ。いかにオーディン達の戦力を地上世界に誘導できるかというね」
「確認出来ているのはヴァルキリーが一人派遣されただけです。本当にこのまま進めるのですか」
「気長にいこう。魔物ならいくらでもいるんだし焦ることはないよ」
クロードは順調に設置された転移門の排除を行っていた。
ここまですんなりいくと拍子抜けではあるがクロードのすることは変わらない。
少しでも早く設置された転移門を排除し溢れ出てきた魔物を駆除するだけだ。
周辺の領主の派遣してくれた部隊とアドルフ王太子の率いてきた近衛騎士団の活躍もあり竜騎士団が帰還した頃にはほぼ鎮圧が完了していた。
クロードは状況を把握するために領主館に戻っていた。
「クロード。お疲れ様。後はこちらでやっておくから休んでいていいよ」
「ありがとうございます。さすがに北方の問題から動き続けで限界です」
クロードが自室に下がるのを確認してファールハイトはほっと息を吐いていた。
ファールハイトもずっと指揮を執っていて休んでいないが兄として情けない所は見せたくなかったのである。
そこに書類を抱えてミッシェルが入ってくる。
「お疲れ様です。なんとかなりましたな」
「クロードが戻ってこなければ民に被害が出る所でした」
「やはりクロード卿と竜騎士団が出払っているタイミングでのこれです。意図的なものを感じますね」
「狙われたと考えてよいでしょうね。残念なことに仕掛けたと思われる魔人は一人も捕まりませんでしたが」
相手は好きなタイミングで仕掛けてこれるのに対してこちらは後手にまわるしかない。
ファールハイトは今回の一件は小手調べだったのではないかと考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます