第307話

クロードの元に一枚の招待状が届いた。


差出人はエインリバース・フォン・マクレガン。


ゲルマン王国で代々魔道具を作っている貴族である。


クロードは訪ねると言っておきながら訪ねられていなかったことを思い出す。


お詫びの品として酒屋に赴き高級ワインを仕入れそれをスパークリングワインにして準備を整えてマクレガン家を訪ねた。


「エインリバース卿。訪ねると言っておきながら中々来られず申し訳ありませんでした」


「クロード卿が忙しかったのはわかっておりますのでお気になさらず」


「どうぞこちらをお納めください」


クロードは手にしていた高級スパークリングワインを手渡す。


「これは気を使わせてしまったようで申し訳ない。立ち話もなんですからどうぞ中へ」


エインリバース卿に促されクロードは屋敷へとあがる。


代々魔道具を作っているというだけあって屋敷の中には様々な魔道具が飾られていた。


キョロキョロするのも失礼なため興味は惹かれたがエインリーバス卿の後に続く。


エインリバース卿は居間に案内してくれて自ら魔道具を操り紅茶を淹れてくれる。


「珍しい魔道具ですね」


「作ってみたはいいものの本職の入れる紅茶と比べると見劣りするためあまり見向きもされなかった物ですよ」


エインリバース卿は苦笑いしているが面倒な手順を魔道具が肩代わりして一定の水準の紅茶を入れてくれるのは称賛に値する。


「クロード卿のおかげで我が家は魔道具の生産依頼を受けて大忙しです」


詳しく話を聞いてみれば冷蔵庫と花火の魔道具だけでも生産が追い付かない状態なのだという。


「仕事を押し付けたようで申し訳ない」


「いえいえ。魔道具職人は生産してなんぼですから」


「何かお困りのこととかはありますか」


「そうですね。顧客からはもっと複雑な花火の魔道具は作れないのかと言われていますがこれが中々難しい」


「なるほど。少々複雑な魔法陣が必要ですからね。サンプルとしていくつか描いてみましょう」


クロードはアイテムボックスから紙を取り出して魔法陣をいくつか描いてみせる。


「これ程繊細な魔法陣を仕込むのは中々骨が折れそうですね」


「慣れてしまえば言うほど難しいことではないですよ」


「お礼として我が家が開発した魔道具の一覧をお渡ししましょう」


「ありがとうございます」


長年作り続けてきたというだけあって一覧だけでもかなりの量だ。


「気になる魔道具があれば生産方法をお教えしましょう」


クロードは一覧を確認して気になったいくつかの魔道具を伝える。


エインリバース卿は快く生産方法を教えてくれた。


クロードはどれから作ってみようかと心躍らせながら帰路についたのである。

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