第306話
「ファイネル様。クロード様。ようこそお越しいただきました。どうぞこちらへ」
慌ててやってきた支店長が奥の部屋に案内してくれクロードとファイネルは勧められた席に腰をおろす。
「本日はお世話になります」
「それでご用件はなんでしょうか」
「クロードの口座の件だ。取引の際にそちらの職員から泣きつかれてな」
「本来であれば預金してくださるのは大変嬉しいことなのですがクロード様の預金額が大きく利子分で負担になっているのは確かです」
「どれぐらい引き出せばご負担にならないのか教えてもらってもいいですか」
「そうですね。これぐらいでしょうか」
「わかりました。その額を引き出させてもらいます」
「ありがとうございます。すぐに用意させますのでお待ちください」
支店長の男性は鈴を鳴らし職員を呼び寄せると指示を出す。
「ところで金融機関のシステムはどうなっているのでしょうか」
「とある魔道具に専用のカードを差し込むと金融機関の所有する魔道具がリンクするようになっています」
「それは興味深いですね」
「我々はこの魔道具のことをロストテクノロジーと呼んでいます。詳しい原理がわかっていないのです」
「調べてみたい気もしますが難しいのでしょうね」
「申し訳ありません。不正を防ぐために一定の地位にあるものしか接触が許されていないのです」
「無理を言って申し訳ありませんでした」
「お気になさらずに」
そこに複数の職員が袋を抱えて戻ってくる。
「こちらが引き出された貨幣になります。ご確認ください」
金融機関を信用していないわけではないがクロードは全額あるか確認をする。
「大丈夫のようですね。今後ともよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
クロードはアイテムボックスに貨幣をしまい父様と共に金融機関を後にして屋敷へと戻った。
「クロード。時間はあるのだろう。準備させているから夕食を食べていきなさい」
「はい」
そのまま二人で食堂へ向かい家族三人で夕食をとる。
料理長の腕は相変わらず素晴らしく栄養バランスも考えられた素晴らしい食事だった。
食事の後のお茶の時間になりクロードは戻ってきた本題を父様に聞く。
「父様。何かお困りのことはありませんか」
「困ったことか。領地の経営は順調だし魔物の被害も未然に防げている。あえて挙げるならクロードのことが心配ということぐらいか」
「僕のことですか」
「王国にとってクロードは使い勝手の良い遊兵になっている。クロードが強いのはわかっているが親としてはそれでも心配してしまうな」
「安全には十分配慮しているつもりです。王国の防衛体制も整いつつありますのでそういった役目もそろそろ終わるかと思います」
父様の言葉を受けて安全には十分気をつけようと改めて思うクロードなのだった。
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