第147話

「報告を聞こうか」


「クロード・フォン・プロミネンスという受験者が満点を取りました。正しく評価するために追加の試験を受けてもらう予定です」


「クロード伯爵か」


「サイネル理事長はご存じなのですか」


「彼は陛下のお気に入りだし王国への貢献度を考えるとそろそろ陞爵してもおかしくない」


「陞爵して侯爵になると」


「いや。彼は立地を考えると辺境伯になるだろうね。独自に優秀な騎士団も持っているし」


「それ程の人物ですか」


「彼は単独でボスクラスの魔物と渡り合えるだけの実力を持っているし任された軍需品の調達の手際も素晴らしかった。ここだけの話王国は彼から多額のお金を借りている」


「情報を頂けるのは嬉しいのですが扱いに注意せよということでしょうか」


「彼ほどの実力者となると学園で教えられることの方が少ないかも知れない。でも学園でしか得られないものもあるだろう。十分配慮してあげて欲しい」


「心得ました」




クロードが王宮を辞して宿屋に戻ると学園からの呼び出しの使者が待っていた。


使者の乗ってきた馬車に乗り学園に戻ることになる。


「何か問題でもありましたか」


「問題と言えば問題だな。君には追加で試験を受けてほしい」


クロードは渡された問題をスラスラと解いていく。


解答の終わった課題から採点をしていくが採点をしていた教師の顔が凍り付く。


用意されたのは高等部でも難しい問題であったというのにまたしても全問正解だったからだ。


全ての問題が解かれ採点していた教師はどうしたものかと考えていると学園長が入室してくる。


「結果はどうだった」


「全問正解です」


「正直に言うと君にこの学園で教えられることはない。それでも入学するかね」


「僕は友人が出来ればよいなと思ってこの学園に来ました。入学します」


「わかった。クラスは同い年の者と同じになるように手配しよう。各科目は受けるだけ無駄だろうな。全授業免除するので自由にしてくれて構わん」


「それでよいのですか」


「我々は公平性を保つために貴族や王族を特別扱いはしないが優秀すぎる生徒に対してどう接するのが正解かわからんというのが正直なところだ」


「助言としては研究室に入るのをお勧めします」


ファールハイト兄様にも戦略研究室に入るのを勧められたのを思い出す。


「わかりました。色々まわってみます」




クロードを見送った後教員達は話し合いをしていた。


「ところで学園長。彼の名前はなんて言うんですか」


「クロード・フォン・プロミネンス伯爵だ」


「プロミネンス侯爵家の血縁で独立した貴族ですか」


「そういうことになるな」


「クロード・フォン・プロミネンス・・・。どこかで聞き覚えが」


魔術担当の教師の一人が教本を取り出して著者を確認する。


「新しく導入した教本の著者と一致するのですが」


「まさかな」


「いや。完璧な解答を考えると・・・」


教員達は沈黙に包まれるのであった。

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