第146話

「私はクロード卿のもとにつきたいと思います」


一人の領主の言葉を皮切りに次々と賛同の声が聞こえてくる。


「我が領はクロード卿のおかげで民の生活が向上しました。感謝しております」


「魔物討伐のため騎士団を派遣してくださるおかげで領内の治安を保つことができています」


「装備を回して頂き兵士達を安心して職務に従事させることができるのはクロード卿のおかげです」


自領のためにしてきたことではあるがここにいる貴族達は深く感謝していた。


クロードのことを子供と侮ることもなく尊敬のできる貴族として認めていたのである。


「みなさん。ありがとうございます。若輩の身ではありますがこれからもよろしくお願いします」


「協力してゲルマン王国を盛り立てていきましょう」


「話はまとまったようだな。新しい体制により問題も多くでるであろうが諸君なら解決できると信じておるぞ」


ここにクロードを中心とした辺境伯領家臣団が結成されたのである。




その頃教員総出で採点作業をしていた学園では軽い騒ぎが起きていた。


「この科目も満点か」


テストは満点が取れないように作られているというのにあらゆる科目で満点を取っている受験者が出たためだ。


「他の受験者のテストを後回しにしてもいいからとにかくこの受験者の採点をすすめてくれ」


公平性を保つために教員には受験番号のみが伝えられており教員は誰かわかっていない状態で採点をすすめる。


しばらくして全ての試験結果が出て教員達は頭を悩ませることとなる。


「全科目満点。武技と魔法の試験も満点。こんな受験者が出るのははじめてだ」


責任者である教師は判断を仰ぐために学園長室へとやってきた。


「何か問題でもあったかね」


「それが全科目満点を取った受験生がでました」


「なるほど。満点を取ったとなると素晴らしい逸材が出てきたことになる。受験者の名前は」


「少しお待ちください」


責任者の教師は名前のリストと受験番号を確認する。


「クロード・フォン・プロミネンスです」


「プロミネンス侯爵家か。あそこの子供達は皆優秀であったな」


「それでいかがいたしましょうか」


「満点ということは評価しきれていないということだ。難しい問題を用意して解いてもらうことにしよう」


「わかりました。呼び出すように手配しておきます」


「他の受験者の採点を引き続き頼むぞ」


「それでは失礼します」




学園長は理事長である貴族に報告をあげようと理事長室を訪れる。


「失礼します。サイネル理事長。ご報告があります」


理事長の名前はサイネル・フォン・ゲルマン公爵。


王家の血縁であり優秀な人材を育てることを期待されている立場の男である。

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