第68話
リッチマン宰相はあがってきた報告書を片手に国王の執務室を訪れていた。
「陛下。プロミネンス侯爵家から新しい都市の建設計画が送られてきております」
「詳細を聞こう」
「流れてきている民の住居を確保するのがメインですが実験的に様々な新機軸を盛り込んだものになるようです」
「悪いことではないように思うが、資金面に関しては何か言ってきておるか?」
「全ての費用はプロミネンス侯爵家が持つようです」
「なら問題ないように思うが、わざわざ儂のところまで話を持ってきたということは何か問題があるのか?」
「プロミネンス侯爵領に流れる民が多すぎて他の貴族から苦情がきております。この流れを放置すれば王家への不信につながる恐れもあるかと」
「難しい問題だな。民が他領に流れるのは、経営に問題があるからのはずだが放置もできぬか。税に困っている貴族には納めるのを猶予せよ」
「国庫への負担になりますがよろしいのですか?」
「構わぬ。だが納めきれない事態になった場合はそれなりの処罰をするということも併せて通知せよ」
「かしこまりました」
猶予された期間で何かしらの金策を講じる必要がある貴族はかなりの数になった。
処罰するという言葉に危機感を募らせたため、民の流出を防ぐべく善政をしくこととなり実際に処罰された貴族の数は少なかった。
クロードは自身の経験と研究結果を踏まえて魔法の本を書いていた。
初歩的なものから応用方法に専門的な部分までわかりやすく書かれたこの本は上、中、下巻に分かれており量としてはかなりの物だ。
出来上がった本を持ってネツァルさんの元を訪ねる。
魔法の先達であるネツァルさんに評価してもらうためである。
緊張しながらも読み終わるのを待ち読み終わったところで声をかける。
「どうでしょうか?」
「ふむ。これはわかりやすくまとめられており教材として革新的じゃろう。今まで曖昧だった部分も補完されておるのも高ポイントじゃ」
「ありがとうございます」
ネツァルさんの評価を終えてほっとしたクロードは次に父様の書斎を訪れていた。
「父様。ご相談があります」
「改まって何だい?」
「魔法の本を執筆したのですがこれを出版したいのです」
「色々、魔法の研究をしていたのは知っていたが本を書いたのか。構わないよ。手配しておこう」
「ありがとうございます」
許可されて浮かれたクロードは次は何をしようか考えながら自室に戻るのであった。
結果的にこの本は急速に広まっていくこととなり多くの学園の教材としても導入されることとなる。
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