第67話

「実は新しい発注と装備の一部の仕様変更をお願いしたくて。親方を呼んでもらえますか?」


親方こそ率先して頼まれた仕事をこなすべく作業中であるが仕事の話である以上、店員は親方を呼ぶべく作業場へ向かった。




全身に汗をしたらせながら親方はすぐにやってくる。


「親方。作業中にすみません」


「いや。クロード様の来訪なら大歓迎です。それに仕事の話でしょう?」


「プロミネンス騎士団用にこちらのアースドラゴンの鱗で鎧を作って欲しいのとオリハルコン製の武器をいくつかお願いしたくて」


「竜種の鱗ですか。これはまたすごい品を持ってきましたね。武器は剣と槍ということでよろしいですか?」


クロードは斧や棍棒などといった特殊な装備を使いこなす騎士団員達のことを思い浮かべ細かい仕様をあげていく。


「なるほど。プロミネンス騎士団には特殊な装備を使う面々がいましたね。彼ら用ですか。承りました」


「長居をしてもあれですし、僕は失礼しますね。忙しい中ありがとうございました」


「いえ。またの来店をお待ちしております」


クロードの去っていったのを確認して店員は親方に話しかける。


「親方。受けざるを得ないのはわかっていますが大丈夫なんですか?」


「受けたからにはやりきる。それになこれだけの素材を託されりゃ鍛冶師冥利に尽きるってもんだ」


クロードが持ち込んだ素材は普通にしていたら手にふれることもできないようなものばかりだ。


親方はこの状況を楽しんでいた。


他の職人達も似たようなものである。


「楽しそうなのは結構ですが体を壊さないようにしてくださいね」


「言われるまでもないが、確かにここ最近は働きすぎだな。すまないが休息のスケジュールを組んでくれ」


「わかりました。疲労具合を確認してきっちり組んでおきます」


「任せたぞ」


親方が作業場に戻っていくのを見届けて溜息をつく店員だった。




屋敷に戻ったクロードは本を読むことにして自室に戻ってきていた。


取り出したのは王都に行ったときに手に入れた魔法関連の本である。


本を読むだけでなく自分なりの見解を紙にまとめていく。


「ふむふむ。ここがこうなってこうなるのか。だけどこちらの本と違っているな。これは確認の必要があるかな?」


疑問や矛盾点など実験したい内容も同時に書き出していく。


ある程度まとまったら次は演習場での実験である。


まとめておいた紙を見ながら色々と確認して結果を記録する。


地道な作業であるがこうした積み重ねがあってこそ高い魔法技術に繋がっているのである。

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