3/3
―――――
ジャジャーン
男「ladies and gentlemen, boys and girls」
男「ていうかgirl!! 聞いてっか!!」
少女「はいはーい!!」
男「30 minutes instant radioの時間だぜ!!」
~♪~
少女「待ってました!!」
男「みんな聞いてくれ!!」
男「ついにおれのリスナーとコンタクトをとることに成功したぜ!!」
少女「いえー!!」
男「ラジオが二台ある人は、555.05チャンネルにも合わせて聞いてくれ!!」
少女「いえー!!」パチパチ
男「いや、マジでね、この10年間で初めて他の人とコンタクトが取れました!!」
男「もうおれのテンションずっとマックスです!!」
少女「ひゅーひゅー!!」
男「『ひゅーひゅー』はちょっと変じゃない?」
少女「そうかしら」
少女「でも私も他の人とお話するの、慣れてないの」
男「そりゃそうか」
少女「盛り上げ方も教わらなかったの」
男「まあいいや、好きに喋っててくれたらいいよ」
少女「はあい」
少女「ね、ね、リクエストしていい?」
男「うっひょう!! ラジオ始まって以来、初めての『リクエスト』きました!!」
男「ここには山ほどの音源がある、なんでも言ってくれ!!」
少女「じゃあね、じゃあね……」
男「うん」
少女「……私の知ってる音楽って、あなたのラジオで聴いたものだけだったわ……」
男「はっはっは!!」
少女「えーと、私が初めてあなたのラジオを聞いたときの曲がいいなあ」
男「それはいつ?」
少女「えっと……1ヶ月以上は前ね。それは確実」
男「アバウトすぎ!! こちとら10年やってんだ!!」
少女「DJさんテンション高すぎ!!」
男「はっはっは!!」
少女「えっとね、えっと」
少女「なんとかナンバーワンっていう曲名だったと思うのだけど……」
男「よっし、それなら分かる」
少女「ほんと!!」
男「えーと、じゃあリクエストいただきました……この曲!!」
少女「わくわく」
男「『スクール・トライアル』で、【ルカNO.1】だ!!」
~♪~
少女「ああああ!! これこれ!!」
~♪~
男「うーん脱力系というか、なんだか体の力がスーッと抜ける感じですね」
少女「ねー」
男「硬派なバンドなんですが、この曲だけちょっと異色系なんですねえ」
少女「他の曲は知らないなあ」
男「まあおれもよく知らないんだけど」
少女「なんだそれー」
男「無理に合いの手入れなくていいからね」
少女「はあい」
男「さあ、他に聞きたい曲は?」
少女「んーとねえ」
男「……」
少女「……」
男「思いつかないなら、適当に流してるけど」
少女「あ、うん、お願いします」
男「はいはい」
~♪~
少女「あ、これも素敵ね」
男「だろ」
少女「ねえ」
男「あん?」
少女「きっと、他にも、聞いてくれている人はいるよね」
男「ああ、まあ、そう願うよ」
少女「10年生き延びてる人、きっと、いるよね」
男「……そう、願うよ」
少女「その人がまたコンタクトをとってくれるまで、一緒に待とうね」
男「何年かかるか、わからないぜ?」
少女「いいじゃない、時間は」
男「……たっぷりあるし、な」
少女「そういうこと」
男「じゃあおれからのリクエスト、聞いてもらえるかな」
少女「なあに?」
男「今から流す曲は、おれが一番好きな歌なんだ」
少女「あら、じゃあ私も聴いたことがあるかしら」
男「いいや、ラジオじゃ一回も流してないんだ」
男「いつもラジオが終わった後に聴いていただけだから」
少女「そうなの? じゃあ知らないかもしれないわね」
少女「で、その曲がどうしたの?」
男「覚えて、おれのために、歌ってくれないか」
少女「……」
少女「無茶言うわねえ」
男「いやいや、今日歌えって言ってんじゃないぜ」
少女「?」
男「毎日流すからさ、ゆっくり覚えてくれたらいいんだ」
男「で、いつか君の生の声でこの歌を聴きたいな、と思って」
少女「私でいいの?」
男「君しかいないだろ」
少女「……そっか」
男「どうかな」
少女「……いいわよ、別に」
男「本当に!?」
少女「ええ」
少女「どんな歌なの?」
男「救いの歌さ」
少女「救い?」
男「そう、死んでいた者が生き返るような」
男「恵まれない者が幸せになるような」
少女「そう」
男「こんな世界の終わりに聴くために作った歌だ」
少女「え……あなたが作った……歌なの?」
男「じゃあ、流すよ」
少女「……うん!!」
男「遂に解禁!! このおれの心の一曲!!」
男「売れないロックバンド『アレルギー・イズム』」
少女「……」
男「ボーカル、ギター、ベース、ドラム、全部おれ!!」
少女「あはは」
男「CD売り上げ枚数、ゼロ!!」
少女「あっはっは」
男「聴いてください、【ザ・オリジナル・リクエスト】!!」
少女「……」
~♪~
少女「素敵な曲……」
男「……」
少女「すぐに覚えられるわ、きっと」
男「そりゃあよかった」
少女「いなくなった人たちも報われたらいいね」
男「そうだな」
少女「死んでいった人たちも幸せになれたらいいね」
男「そうだな」
少女「私たちも、幸せになれるかしら」
男「なれるさ」
男「現に今おれは、話し相手ができてこの上なく幸せだぜ」
少女「……」
男「違う?」
少女「そう、そうね、その通りだわ」
男「そろそろ30分だ」
少女「そう……」
少女「明日も、話せるわよね」
男「もちろん」
少女「いなくなったり、しないわよね」
男「そんなこと、あるわけないだろ」
少女「明日も、ラジオつけて、楽しみに待ってるからね」
男「ああ」
少女「じゃあ、また明日ね」
男「んん、ゴホン」
少女「?」
男「明日もこの時間に、チャンネルは555.00でよろしく!!」
男「ラストナンバーはもう一回この曲!!」
男「『アレルギー・イズム』で【ザ・オリジナル・リクエスト】!!」
少女「あはは」
男「しっかり覚えろよ!!」
少女「はあい」
~♪~
★おしまい★
【SS】30 minutes instant radio モルフェ @HAM_HAM_FeZ
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