「もーお前さ、俺のこと呼び出したりとかしなきゃいいんじゃねーの? 死んだとでも思えよ。その方が楽だろお前も。」

 「……じゃあ、なんで来てくれるんですか。」

 「暇だから。」

 それ以上の言葉はやっぱり、俺のどこを叩いたって出てはこない。

 中学生だった伸一を抱いたのは性欲だし、今日ここに来たのは暇つぶし。それ以上でも以下でもない。

 たしかはじめて伸一に手を出したあの晩は、呼び出せるはずだったセフレが呼び出せなかったんだと思う。急な仕事だとかなんだとか言って。それでもって当時大学生だった俺は、卒業のかかった試験がその日に終わったところで、さすがに1週間程度は禁欲生活をしていた。平たく言えば溜まっていたわけだ。

 そこにまとわりついてくるのがガキだった伸一。薄っぺらい身体や毛の生えていない白い肌は、女の身体とそこまで変わらないように見えた。姉は朝から晩まで看護師として働いていたから、家には俺と伸一しかいなかった。やったのはリビングのソファ。伸一は泣いていた気もするしそうじゃなかった気もする。もうよく覚えていない。

 取り敢えず、まぁまぁ具合はよかったんだと思う。そっから金を払ってでも何回かは抱いているわけだから。女を抱いて稼いだ金を、ガキを抱くために放出していた1年ちょっと。今考えるとアホとしか思えない。

 「もう一回してくれたら、2度と呼び出したりしませんから。」

 「それ、聞き飽きてんのな。」

 伸一を抱かなくなったのがいつのことか、日付どころか年度も覚えちゃいないが、このセリフはもう聞き飽きていた。もうちょっとましな脅し文句なりすかし文句なりを考えて来いとも言いたくなる。

 「暇だから来てるだけなんだよな。暇じゃなきゃ呼ばれても来ねーから関係ねぇんだよ。」

 めんどくせー、陰気なつまんねぇ男。それでも呼び出されたときには時間があれば一応顔は出すことにしている。俺だって男に刺されて死にたくはないし、こいつは腐っても俺の甥だ。

 「叔父さん、今度結婚するって聞きました。」

 「するよ。」

 「何回目ですか。」

 「4か5。」

 「5回目です。」

 「知ってんなら聞くなよ。」

 「……もう、俺と死んでよ。」

 「なんでだよ。」

 なにがどうなってこの甥っ子がここまで俺にずぶずぶに嵌り込んでんのかがさっぱり分からない。殺したいほど憎まれるのはまぁ分かる。ガキをレイプした罪は重い。しかしこうも縋られる理由が分からない。取柄はセックスしかない上にもうそこそこ年も取ったくそヤリチンでしかないのに。



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