第5話 原作ブレイク工業
翌朝、オレは受領した制服に袖を通した。
感動の瞬間だ。オレは本当にあの聖塔学園の一員となったのだという実感に胸がいっぱいだ。
だが、自分の制服姿を見ようと鏡の前に立った瞬間、テンションが下がった。鏡の中の蘆屋道孝の顔が原作では絶対しなさそうなしょんぼり顔でこちらを見返している。
やっぱりオレはあの蘆屋道孝だ。かませ犬で、ナルシストで、人気投票の獲得票数0の。せめて他のサブキャラとかモブなら何の憂いもなくこの世界に転生した幸せを噛みしめられたのに。
落ち込んでいても仕方ないので、彩芽の用意してくれた朝食をとってから学園へ。
そうして、正門の前までたどり着くとオレの脳内に声が響いた。
『おはようございます、蘆屋道孝。正門を通り、係の案内に従って移動してください』
学園の管理精霊の声だ。原作通りセクシーなボイス。頼み込んだら携帯の待ち受けとかやってくれないだろうか?
指示通りに正門を潜って、校舎内へ。案内役は学園で使役されている女性型の
彩芽と同じメイド服を着て、こちらにお辞儀する姿はとても人形とは思えない。
「……やっぱりかわいいな」
「ありがとうございます。作り主様が喜ばれます」
原作の立ち絵を見た時から思っていたが、この自動人形やたらと造形に気合が入っている。あえて無表情にしてある以外は見た目では人間と区別できない上に、声も機械音声なのに妙に色っぽい。そりゃ、一部のマニアがそういう同人誌を書きまくるわけだ。
しかも、この自動人形、かわいいだけじゃなくて強い。あるルートで学園が襲撃された時には六本腕になり、スカートの中からガトリング砲を発射していた。
そんな自動人形についていくと学園の校舎にたどり着く。
一見すると何の変哲もない学び舎だが、よく目を凝らせば校舎全体が巨大な結界に覆われていることが分かる。原作でも描写されてはいるが、改めて自分が異能の力を身に着けて観察してみるとその精緻さ、強力さが実感できた。
案内に従ってたどり着いた先は、1年1組の教室。
入学試験に合格した生徒はその成績に応じてクラス分けされるのだが、そのうち1組は成績優秀者の属するクラスだ。
ちなみに、
家の面子の問題だ。命を狙ってるくせに、唯一の男子であるオレが落ちこぼれれば家の恥になるのでそれは避けたい。本家の連中はそう考える。
さて、1組の面子だが、まず原作主人公こと、土御門輪はこのクラスの所属だ。んで、アオイもそう。ほかにもリストの上位者が数人。できればここは避けたかったが、
唯一の救いは、このクラスの担任教師が極めて常識的、かつ温厚な人物であるという点だ。おまけに原作での活躍も少ないので、リストにも載ってない。
さあ、早く来てくれ地味子。誰かに話しかけられるより先に、特に隣でオレのことを見ている主人公が口を開く前に。
しかし、そんなオレの期待はまたもや裏切られることになる。バーンと勢いよく扉を開けた現れたのは、地味子ではなかった。
「――おはよう、探索者諸君。ぼくが君たちの担任をすることになった、
驚きに静まり返ったオレたちをよそにずかずかと教壇にまで進んだスーツ姿の美女は開口一番そう言い放った。
誘命。探索者として知られる異名は『死神』。
死人のような白い肌をして、星のない夜のような黒髪。どこか愁いを帯びたその相貌は何かを嘆いているようにも、憐れんでいるようにも見える。豊満なはずの体つきでさえ、生よりも棺の中の押し込められるような寒気を発していた。
来ているスーツも真っ黒で、光沢がない。喪服だ。右手首には数珠が下げられ、首には十字架。あまりにも節操がないのに、彼女が身に着けているというだけでなぜかそこに統一性が生まれていた。
それもそのはず、彼女こそは『死』の体現者。その姿は見る者に美しさと同時に死を連想させる。
この世界に存在する『七人の魔人』。数ある異界の中でも人類の集合無意識の深層に根付く最大級の異界『深異界』を支配する最強最悪の探索者がそこに立っていた。
◇
死神、誘命はクラス全体を見渡たし、何度か頷くと大あくびをした。
眠たげな顔には血の気が通っておらず、骨が浮かび出ているかのように青白い。やる気どころか、生き物特有の生気がそこには欠如していた。
「いやー、寝坊しちゃった。あれだね、時差ボケ? 異界ボケっていうのかな? まあ、ぼくがいなくても大丈夫でしょ? みんな、優秀だしね! てか、眠いな。寝ていい?」
そんな死神は開始10秒で担任としての仕事を放棄している。
オレを除いた9人のクラスメイトは半分があの誘命が教室にいることに思考が追い付いておらず、半分はエキセントリックな動く死体に戸惑っている。
前者は家の事情ですでに異界についてある程度の知識や経験を有しているグループで、後者は元一般人のスカウト組だ。
まさしく死んでいるような沈黙が教室を包む。しかし、勇者が一人いた。果敢に声を上げたのはリーズだ。
「お、お待ちください! 担当教官として、何か訓示などを――」
「――必要ないでしょ、そんなの。君たちは皆、相応の覚悟をもってこの場に集まったはずだ。なら、ボクから言えることはない。あとはそれぞれ技を極め、経験を積むだけでいい。あ、それともボクに稽古つけてほしいの? いいよ! 楽しそうだし!」
気力を振り絞ったリーズも死神の最後の一言に何も言えなくなる。
死神の弟子になるということはこの界隈では死を意味する。
なにせ、修行の第一段階として彼女のホームグランドである冥界に放り込まれる。その時点で概念的に一度死んでいるし、たいていの奴は冥界の住人として居つくことになる。
「そうだなー、折角だし、自己紹介でもする? このクラスの半分くらいはぼく知ってるよネ? でも、いいか! 死んだらただの骨だけど、生きてるうちは名前は大事だからね」
そういって死神は教室の黒板一杯に『
……ただ名前を書いただけなのに、そこから冷気が漏れて、周囲の窓に霜がつく。どこからか、誰のものでもない声が聞こえるのは気のせいではない。
抵抗力の弱い何人かは冷や汗をかいている。長時間晒されると心拍数も下がってくる、最後には仮死状態だ。
これで異能でも何でもなくただの所作なのだから魔人の恐ろしさがよくわかる。
「ヒッ!?」
スカウト組の一人が悲鳴を上げた。彼女の視線を追うと、校庭側の窓に先ほどまでいなかったカラスの群れが止まっているのが見えた。
隣に座っている輪も緊張に唾を呑む。そうして、絞り出すような声でそう言った。
「……何なのこの人」
当然の反応だが、輪の場合は少し意味合いが異なる。目の前の存在がどれだけ危険か直感的に理解した、そういう反応だ。
そんな生徒の反応にかまわず、死神は黒板をばんと叩き、名乗りを上げる。
「
普通の神経をしていればその二つを並べないが、死神にとっては生者も死者も区別がない。いつかは必ず彼女に還ってくる存在だ。
「で、探索者! 君らの先生! 以上!」
あまりにも雑な説明にオレは思わずリーズの方を見る。すると、彼女は意を決したように前を見た。
がんばれ、リーズ。この場で死神に突っ込めるのはお前だけだ。オレはいやだ。
「説明が雑すぎます! 七人の魔人の一人がなぜここにいるのか、それをわたくしたちは知りたいのです!」
ちゃんとしているな、リーズ、これでなんでかませ犬なんだろう。原作者も認識を改めるべきだな。
「あ、そうだった。そこ説明してなかったネ。まあ、うん、死神でーす! なんでここにいるのかって言うと、うーん、ノリ?」
軽い調子で言っているが、自称死神という名乗りが嘘でないことは先ほどの冷気でスカウト組にも伝わっている。
死神の名はただの異名じゃない、彼女の在り方そのものを表したものだ。
それと同時に、信じられないほどの適当人間でもある。オレの知る限り、教師の仕事に全人類で最も向いていないのが誘命だ。ノリで教師になり、原作をブレイクしたというのもおそらく事実だろう。
「そもそも、このクラスの担任は貴女ではなくミス・ミコタなのでは……?」
リーズが諦めない。ナイスだ。オレもそれは知りたかった。どうせ碌な理由じゃないんだろうが、もしかしたらちゃんとしているかもしれない。
「ああ、地味子のこと? うーん、なんとなく教師をやってみたくなって代わってもらったんだ。なんか泣いてた、なんでだろ? まあいいか、大したことじゃないし。重要なのは、教師じゃなくて生徒。つまり君たちだからネ! 相当粒ぞろいだって聞いてるよー」
そう言ってオレの方にウインクしてくる。うんうん、分かるよ。オレの隣には主人公が座ってるしな!
だが、悲しいかな。死神が見ているのはオレだ。なにせ面識がある。修行中に潜った異界で出会ってしまって以来、近所の野良猫に餌をやるみたいな感覚で接触されている。
「まあ、あとは伝達事項があるけど……別にいいや。大したことじゃないし。じゃあ、そういうことで。みんな、次会う時まで死なないようにネ! 死んだら僕とマンツーマンでお説教だからネ!」
縁起でもないことをまくしたてて、死神は教室を去る。あとに残されたのは絶賛困惑中の10人の生徒だけだ。
◇
「……どうすりゃいいんだ」
入学早々、深刻な原作崩壊により原作知識というアドバンテージが崩れ去ったオレは机に突っ伏して一人嘆いていた。
本来この学園で得るはずだった原作知識による転生無双、モテモテハーレム生活、そして穏やかな生活はもはや望むべくもなかった。
まあ、この世界では無双もハーレムも死亡フラグでしかないから目指したことは一度もないのだが。
しかし、どこかの球団の暗黒時代のコピぺのように嘆きたくもなる事態だ。
オレのできるかぎり原作通りに事を運んで、最小限の改変で済ませるというプランは死神の登場によって完全に崩壊した。対処法が全くない。どうにかしようにも相手が強すぎる。
今日はもう授業はないから午後から自由時間なのだが、動けねえ。幸せな老後のために貯金してたのに預けた銀行ごと倒産したみたいなもんだ。ふて寝の一つもしたくなる。
「ねえ、蘆屋君」
現実からの逃避を試みていると、中性的なイケボに声を掛けられる。
放っておいてほしい。こっちは主人公となんか関り合いになんかなりたくないのだ。
「蘆屋君? 寝てる?」
ああ、寝てるからさっさと別のところでヒロインでも口説いててくれ。この世界のためにもそれが一番だ。オレみたいなかませ犬と関わっても何もいいことなんてないぞ。
あ、畜生。自分でかませって認めちゃったじゃないか。
「起きてよ、蘆屋君。聞きたいことがあるし、一緒にご飯食べよう」
いや、寝てると思ったなら諦めろよ。何で体揺すってくんだよ。自由かよ。てか、なんでそんなに関わってくるの?
RPGとかだと全NPCに話しかけるまでエリア移動しないタイプ?
「ねえ、蘆屋君ってば! 無視しないでよ! 酷いじゃないかぁ! ご飯代は僕が出すからさぁ!」
だから、しつこい! 凝り性なのか? ここはゲーム世界のような現実で、ゲーム世界そのものじゃないから実績集めてもトロフィーなんてもらえないぞ。
「あーしーやくーん! おーきーてー!」
もうなんか子供みたいになってるし、なんでそんなにオレの拘るんだこいつ。
しかし、ここまでされても無視していると、今度はオレの心象が悪くなる。
好かれても死亡フラグが立つが、嫌われても死亡フラグが立つ。だから、危険人物なのだ。
ここで変に印象に残ると、後々どうなるかわからない。適当にあしらうしかない、か。
「……なにか用だろうか、土御門君」
「あ、輪でいいよ。君付けだとちょっと距離あるし」
自分はくん付けなのに、なぜオレには呼び捨てにさせようとするんだ。
まあ、ちょっとずれたところがあるのも原作通りだ。こういうところがギャップになって「あれ? この人案外かわいいところある?」って感じで女性キャラをキュンキュンさせてたもんな!
でも、オレにはそんなことはしなくていいぞ! 何なら壁になって見てるから原作ヒロインにやってくれ!
「ほら、このクラスの男子って僕と君の二人だけだし? 仲良くしたくってさ。僕、スカウトされたばっかりでいろいろ聞きたいこともあるし。その、僕の友達になってほしいなって……」
少し顔を赤らめてもじもじする輪。線の細さも相まって男には見えない。だが、こいつは男だ。
しかし、なんだこの主人公。かわいいんですけど。エロゲからBLゲーにジャンル変える気ですか?
……いかん。想定外のかわいいさに思考が乱れた。
「……それでオレか」
うんと頷く輪。原作ではこの場面で主人公と会話するのはオレじゃなくてヒロインの一人であるアオイなのだが、基本的に不機嫌な彼女よりはまだオレの方がとっつきやすいから、話しかけてくるのはまあ、わかる。なんでこんなにしつこいのかは意味不明だけど。
そう考えると原作の蘆屋道孝、態度が悪すぎる。なにせ口を開けば「オレは名門出のエリート」だの、「君たちとこのオレでは家の歴史が違う」だの、死亡フラグを垂れ流していた。
かませ犬になって死ぬのも半分は性格のせいだ。オレも経験したから蘆屋本家の環境のひどさは知っているが、あれではかませ犬以外にはなれない。
「それに、先生が教えてくれたんだ。蘆屋君は凄い優秀で、なんか術の特許? も持ってるから、何か困ったら話しかけなさいって」
「…………いや、オレは優秀じゃないが?」
死神め。輪に余計なことを吹き込みやがって。確かに解体局に申請して術の特許はいくつか取得したが、それがこんなところで裏目に出るとは……。
学生も含めて解体局所属の異能者は、オリジナルの術を開発した場合、そのことを解体局に申請し、登録する義務がある。
個人による悪用を防ぐための制度で、その登録の代わりにえられるのが特許料だ。
他の術師に術が伝授された場合、自動で金銭が振り込まれることになっている。
特許一つで100万単位の不労所得になるから、将来的に本家から離れる際の収入を確保するために地味な術の省略形を5つほど申請していた。
まさかそれが死神に知られているとは……くそ、どうせ裏目に出るなら、レアメタルの取れる鉱床を見つける術とかを開発しとけばよかった。
「……まあ、飯を食うくらいなら、別にいいよ」
オレの答えに輪は笑みを浮かべて喜ぶ。原作では主人公視点で話が進むから、輪の笑顔のcgとかはなかったけど、いい笑顔だ。
100パーセント喜んでくれているだけに罪悪感に少し胸が痛む。
オレが輪との昼食を了承したのは打算ありきだ。
入学早々原作ブレイク祭りだ。細かな確認を怠ると後々何が起こるかわかったもんじゃない。
危険人物リストの上位者である土御門輪と深くかかわる気はないが、原作の土御門輪と実際に目の前にいる人物との差異をこの機会に確かめるのは大事だ。
んで、その後は徐々に距離をとって輪の人間関係からはフェードアウトする。彼もすぐにモテまくって美少女に囲まれるからオレのことは気にしなくなるさ。
仕方なく椅子から立ち上がると、輪の背後から近づいてくる誰かが見える。あのいかにもお嬢様然としたシルエットはリーズだ。
「お待ちなさい!」
あー、そういえば、こんなイベントあったな。蘆屋道孝にも本筋にもあまり関係のないイベントだから、今の今まで忘れていた。
今から起こるのは、主人公がどんな選択をしても必ず発生するいわゆる共通イベント。物語最序盤の決闘イベントだ。
「ツチミカドリン! わたくしと決闘なさい!」
おー、幾度となく聞いたセリフだ。すげえ安心した。この混沌とした世界の中でリーズだけは
ありがとう、リーズ。おかげで少し安心した。原作通りの出来事がちゃんと起きるならオレの原作知識はまだまだ役に立つ。
「決闘? 君と僕が? なんで?」
「入学試験の結果、わたくしは納得していません! その白黒を決闘でつけようというのです!」
「ああ、それ。だからどっちでもいいよ。なんなら、決闘も君の勝ちでいいよ。僕は蘆屋くんとご飯食べに行くから」
「そういう! 態度が! 許せないのです!」
「そんなこと言われても……」
ヒートアップしていくリーズと気付かず煽っている輪。この構図も懐かしい。
このまま決闘してくれたらオレもいい感じにフェードアウトできそうだ。輪について確かめるのは別にほかの機会でもいいわけだし。
「とにかく決闘です! 逃げることは許しません! 立会人は、そうですね……」
教室を見渡すリーズ。原作では確か立会人に選ばれたのは、アオイだったはず。
しかし、教室に残っている生徒の中にアオイはいない。
ふうむ、決闘の立会人は誰にでもできるし、別段何かのきっかけになるわけでもないから、許容できる変化ではある。まあ、一応、一歩下がっておくけど。
あれ、なんでこっちに歩いてくるんだ? 目の前に立ってどや顔するのやめてくれます? ねえ、怖いんですけど。
「アシヤミチタカ殿! あなたにお願いしますわ! 蘆屋家は1000年以上の歴史を持つ名家! 公平な裁定を期待しますわ!」
「……えぇ」
お前にはがっかりだよ、リーズ。お前ならきっとオレには関係ないところで事件を起こしてくれると思ったのに。
オレの気持ちを、裏切ったな! ていうか、お前、なんでオレが断らない前提なんだ。
「いや、普通に嫌だけど……」
「ぐうっ! 嫌ということはできるできないで言えばできるということです! であれば、やっていただきます!」
「あ、僕もお願いしたいな。蘆屋くんが審判やるなら、その決闘? とかいうのやってもいいよ」
「決まりですね! 叩き潰してあげますから、覚悟なさい!」
「じゃあ、オレはこれで……」
気付かれずに教室の端に移動して、そのままフェードアウトしようとするが――、
「お待ちになって!」
がしっとオレの手を掴むリーズ。掌柔らかいね! でも力強いね!
「わたくしはあなたにお願いしたいのです! ミスター・アシヤ!」
「いや、だから断るって」
「そこをなんとか! 同じ名家のよしみです!」
「そんなよしみは知らない! オレは家に帰るんだ!」
「お願いします! わたくしは公平な勝負をしたいのです! そのためには優秀な術師に裁定をお願いしたいのです!」
全然離してくれない。というか、腕を抱え込むな! 当たるだろ、色々と!
「僕も蘆屋君じゃないと嫌かな?」
今度は逆の手を輪に掴まれる。なんでだよ、お前とオレ、さっき知り合ったばかりなんですけど。こっちも力強いし、男なのに掌柔らかいし、こんなところまでイケメンなのか?
「そもそもなんでオレなんだ? 別に誰でもいいだろ、離してくれ。オレは家に帰る」
「何か信用できそうな気がする。勘だけど」
お前の勘はシャレにならないだろ! ああ、クソ、逃げられない! おのれ、リーズ、こんなところで粘り強さを発揮するんじゃない!
「ツチミカドリン、離しなさい! ミスターアシヤを見込んだのはわたくしが先です!」
「どっちでもいいじゃん、そんなの。ともかく、蘆屋君、頼むよ」
どっちでもいいなら離してくれ。あと、リーズ、気付いてないだろうけど、当たってる、というか包まれてる。すごい、柔らかいです。あと、どっちからもいい匂いがします。
そうして、押し問答は三十分近く続いた。オレが根負けしたことは言うまでもない。
おのれ……リーズリット・ウィンカース、序盤で主人公に絡んでくるチンピラの立ち位置なのになんで変なところで意志が強いんだ!
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