攻めですか、受けですか。どちらでも

 翌朝。支度を済ませオタク集まる街へ。駅に10時頃到着しスマホを弄っていると人の気配。


「遅れてしまい申し訳ありま――」


 男性にしては可愛らしい声。目を向けると小柄で大きめのヒンクのカーディガン、ベージュのズボン。灰色とピンクのグラデーションの髪に萌え袖と来た。


「おはよう。BL作家の保城 悠木さん」


「あ、烏賀陽さ~ん。会いたかったぁ~。この前はモデルありがとうございます。そして、カジュアルからスーツと突然のオーダーすみません……」


「大丈夫、大丈夫。何色がいいのか分からなくて紺色で着てきちゃった。場に合わなかったらごめんね。今日は経営しているBLカフェのお手伝いとモデルだっけ?」


「はい!!」


 顔文字のキリッとした顔。そして、目が星となり少し涎が……。さりげなく拭ってやる。


「皆、烏賀陽さんのこと気に入ったみたいで、モデルついでにお手伝いさせたとき『好評だった』って言ってましたよ」


「そうなの?まぁ、時々知り合いにBLっぽいことしてたからね。抵抗はないし、むしろ楽しかった。あと、同人読んだよ」


「あ~ッありがとうございます!!」


 むぎゅーっと烏賀陽に抱き付き、子供のような可愛らしい笑顔。よっぽど嬉しかったか保城が離れず、いちゃつきながら店へ。


「おーい、保城。また遅――烏賀陽さん!?」


「あーごめん。誰か保城さん引き離してくれない? くっついちゃって取れないのよ」


「保城、何してんだよっお前!! すみません、経営者が……」


 開店ギリギリまで保城が離れず、メンバーである五人に笑われる。


「保城って、ホント烏賀陽さんのこと好きだね」


「だって~スタイル良いし僕の注文何でもやってくれるんだもん。壁ドンとか、床ドンとか、顎クイとか。皆もやって貰いなよ」


 保城の頭にヒョコヒョコと犬の耳が見えるのは気のせいか。やっと離れるもずっと腕にしがみつき、少々鬱陶しく感じる。


「烏賀陽さんは責めですか? 受けですか?」


 深緑色の髪に少し目付きが悪いが声は優しい男性が保城を引き離しながら口を開く。


「俺? どっちも出来るよ。でも、加減が分からないから『やり過ぎたらごめん』ってのは先に言っておく」


 烏賀陽の言葉に――。


「烏賀陽さん、僕を襲ってほしい!!」


 保城がキラキラとした目で彼を見る。


「メインは君達だから、俺はあくまでサポート」


 厳しい言葉を吐くとシュンッと黙った。

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