キャストのフリだけどご指名とあらば
開店と同時にリンッリンッと客を知らせるベルが鳴る。店内には数人の女性が来店。
烏賀陽は客のふりをするようにカウンターに腰掛け、料理を作っている深緑の彼。柴田 緑とプライベート禁止のさりげない会話。
「烏賀陽 、お久しぶり」
「久しいね、緑」
無言で席を立ち、緑の隣に手を伸ばし手は此方に顔を向けように顎に手を添える。
「ねぇねぇ、あの人初めて見る。新人さんかな。かっこ良くない」
二人のやり取りが目に入ったか。コソコソと声が聞こえ、答えるように顔を向けウィンク。キャーと黄色い悲鳴に思わず笑う。
「烏賀陽さん、ちょっといい?」
緑に手を引かれ彼女達の元へ。
「俺達のこと気にしてたみたいだけど。この人、放浪癖があって時々来る“俺の兄貴”なんだ」
肩を組まれ、一瞬『ん?』となるも臨機応変に話しに合わせる。
「甘えん坊の緑が珍しく強気だね?何、俺に襲われたいの?」
タメ口の上から目線。間近な二人のやり取りに顔を真っ赤にする女性達。手を取り合い、小さな悲鳴をあげ何やら相談か。様子を伺いながら暫し緑と絡む。ジャケットに手を入れられ、「止めろ」と言いつつわざと肘までズリ下ろした。
「ヤバイ。メニュー頼まなくても二人が……ん~ポッキーゲームお願いします!!」
作戦勝ちか。女性の言葉に緑はニコッと微笑む。
「誰と誰がいい?」
設定決め。だが、「お兄さんの責めと緑さん受け」と即答だった。
「出来ればお兄さん。あの……」
恥ずかしそうにしているため、触れない距離まで近寄り耳打ちして貰う。烏賀陽は「あぁね」とジャケットを着直し、緑をソファーに腰掛けさせ、女性達の「スタート」と言葉を合図に歩き出した。
「あ、兄貴おかえり」
「ただいま。何かあった?悲しげな顔して」
隣に腰掛け、後頭部に手を添えてはグッと引き寄せる。烏賀陽の胸に手を付き「いや、大したことないよ」と離れるも元気がない。
「じゃあ、元気が出る『おまじない』かけてあげようか?」
ポッキーを手に取り、緑の腕を引く。彼の足に触れては持ち上げ、ソファーに寝転ぶよう強引に誘導し、覆い被さるように咥え近づく。緑は顔を真っ赤にしながら咥え、烏賀陽がカリッと噛み砕き鼻が付く距離まで行くと緑の後頭部に手を添え、甘いキスをわざと隠した。
黄色い悲鳴が聞こえるも、なかなか緑が顔を上げず顎クイ。
「今ので忘れた? 何かあったら、また呼びな。いつでも『おまじない』かけてあげる」
そう言い烏賀陽は立ち上がろうとするも、恥ずかしそうに口元を隠した緑が彼の手を引く。
「もっとやって」
とても弱々しい声で言う。
「おかわり? いいよ。何して欲しいの?」と馬乗りになり――。
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