良質のピカレスク・ロマン
- ★★★ Excellent!!!
拙い感想ですが書かせていただきます。
まず、界隈において魔物転生などの悪役が主人公の小説は、ヒロインが多く派手で、主役も美形の男やらスライムやドラゴン等の人外が多い印象を受けます。
そして主人公は社会的弱者の味方であり、道徳や法律に反しながらも情に厚かったりします。
ですがこの作品は違いました。
主人公は「老人」です。しかも高級官僚だった人です。癌になり、88歳で道連れ自殺を行うような自分本位の人です。
そんな人物が、癌が消え健康を取り戻し、88歳の外見のままに異世界に来てしまいます。
当然ながらゲームや小説に明るいわけもなく、とまどいはあるものの、持ち前の頭の良さで現状を把握し、冷酷さと人間観察力で冒険者として仕事を始めてしまいます。
彼は人間やモンスターの精気を吸収して若返る事が出来ますが、若返っても老人としての外見を表面的には捨てません。
若さを取り戻しながら殺人を行い、それでいて社会的生物としても生きる。目的を同じくしない者にも、協力者に成りうるのであれば利を示してみせる。マッチポンプも平気でやります。
主人公はそういったしたたかさを持ち、恐ろしい人物であるのに、常に不思議な魅力を放っているのです。
カクヨム界隈が上記の様な状態であるのに、あえて醜い外見を捨てず、ソコに魅力を加えられるということに、私はこの作者様の凄さを感じました。
まだ全部読んでいませんが、ゆっくり楽しみたいと思います。
※主人公のパーティ名が「生涯現役」というのですが、茶を吹いた所為で精密機器が危なかったことを白状しておきます。