第165話 宵闇の外衣
B級ダンジョン≪悪神の
迷宮の奥から流れてくるその微風が何とも薄気味悪く、遠くから聞こえてくる何か獣のうなるような声と相まって、一層、薄暗い通路の先の暗澹たる雰囲気に拍車をかけてくる。
「ショウゾウさん、やっぱりB級ともなると独特の雰囲気がありますよね……」
≪
「そうだな。一応、≪蜘蛛≫を使って、集められるだけの情報を得ようとしたが、この≪悪神の
「了解だ。マッピングしながら進むことになるから時間はかかるが、そこは勘弁してくれよな。敵の気配を察知したら、知らせるから、エリック、気を抜くなよ」
レイザーはそう言うと自ら先頭に立ち、罠がないか、敵の居場所はどのあたりかなど、
レイザーやエリックには、それぞれ新たに、各迷宮からショウゾウが得た≪魔王具≫のいくつかを支給しているが、ショウゾウ自身が自ら使用することを決めたのは、≪
≪宵闇の
自己修復機能があり、近くに存在する影などから闇を吸い上げ、それで損なわれた部分を自ら繕う。
その他にも溜めこんだ闇を周囲にまき散らし、煙幕のような使い方も回数制限こそあるが可能という代物だ。
こうしてショウゾウたちは新たな装備品を各自装備することで戦力の底上げを図り、パーティの頭数の少なさをどうにか補おうと考えたのである。
レイザーの斥候としての能力は、やはり優秀で、戦闘面ではあまり貢献できないものの、このB級という難易度の迷宮にあっても十分に通用していた。
彼の冒険者としての評価があまり高くなかったのは、やはりギルドの査定の方法が、あまりにも戦闘能力に偏重していたからであり、そういう意味でもこのレイザーは不遇であったのだとショウゾウは改めてそう思った。
そのレイザーを仲間として得られたことは本当に幸運なことであったし、もう一人の仲間であるエリックも目に見えて成長している。
この迷宮の一階の出現モンスターは、
視認しづらく、不意打ちが多いため、レイザーの危険察知能力やショウゾウの≪
そんな中、エリックは率先してパーティの盾として敵の前に立ちふさがり、体を張った。
≪
これでもう少し剣術に上達が見られたなら、前衛職として十分に独り立ちできそうなほどの成長を見せている。
だが、このパーティ最大の欠点でもある敵をせん滅する殺傷力は、ショウゾウ一人で担うほかなかった。
「星々の如き、光の煌めきよ。散り、爆ぜて、彼の軍勢を討て。
ショウゾウの詠唱により、その足元には魔導神の叡智を現すらしい魔法陣が現れ、周囲に無数の光る玉が浮かび上がったのも束の間、それらはまるで意志を持っているかのように飛んでいき、パーティを取り囲んでいる
敵に触れた光弾は、凄まじい閃光と熱を発生し、味方であるレイザーたちもそのあまりの凄まじさに恐怖の顔を浮かべた。
「これはまた、なんという……。ショウゾウさん、あんた、どんどん人間から遠ざかっていくように見えるな。こんなヤバい魔法いつの間に使えるようになったんだ」
床に落ちて、焼け焦げた無数の
「ああ、なんとか手数を増やしたくてな。この光魔法なら、細かい操作が無くても、複数の敵に正確な攻撃ができる。その代わり、莫大な
「さすがショウゾウさん、すごいな。あのグロアとかいう魔人と近接戦闘の訓練もやってるみたいだし、本当に頭が下がります。あの色っぽいお姉さんのところに頻繁に通ってたのもこのためだったんですね」
「ははっ、別に変な下心で通っていたわけではなかったというわけだ」
ショウゾウは、アラーニェとはたまに逢瀬を重ねる間柄になっていたから、内心で少し焦った。
エリックの奴、意外と儂のことを観察しているのだな、と。
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