第154話 長い夜

名前:ショウゾウ・フワ

年齢:25

性別:男

レベル:52

種族:人間

契約神:魔導神ロ・キ(闇魔法契約済み)

契約魔法:火魔法、地魔法、水魔法、命魔法、風魔法、光魔法

属性素質:火、地、命、風、水、光

スキル:異世界言語LV4、オールドマンLV3、忍び足LV4、怪力LV4、掃除LV1、魔法適性MAX、鑑定LV2、格闘LV4、売春LV1、恐喝LV3、物乞いLV1、薪割りLV1、釣りLV1、皮革加工LV1、鍵開けLV1、どこでも安眠LV3、シラミ耐性LV2、仕掛け漁LV1、悪食LV2、調理LV1、性技LV1、暗算LV1、軽業LV4、乗馬LV1、歌唱LV1、代筆LV1、掏摸すりLV2、演技LV4、剣技LV5、捕縛LV2、裁縫LV 1、札占いLV1、刃物研ぎLV1、舞踊LV1、鉱夫LV1、達筆LV1、御者LV1、荷役LV1、投げナイフLV1、盾LV1、製図LV1、演説LV1、魔力効率LV2、弓術LV1、魔力感知LV3、拷問LV2、応急処置LV1、目利きLV1、狩猟LV1、商売LV1、処世術LV1、忍耐LV1、武芸LV2……気配察知LV1、……威圧LV1、……複合魔法技術LV1……社交術LV1、神降しLV1、収集家LV1……獄吏LV1……




虚界ヴォダスを通って、オースレンの街の裏にある伏魔殿ふくまでんに無事帰還したショウゾウは、自らの書斎に籠り、「魔導の書」と向き合っていた。


人語を理解し、持ち主の要望に会った内容を可能な範囲で表示してくれるらしいこの本は、元の世界で死の今際にいたショウゾウをこの異世界に誘った妖しげな革帽子の男から譲り受けたものである。


ショウゾウの推測ではあるが、この「魔導の書」には自我があり、何者かにとって都合が悪いと思われる項目については、そのことを伏せたり、曖昧にして誤魔化すようなところが見受けられる時があり、そのため、その内容については鵜吞みにはしないように気を付けていた。


病魔に侵され、しかも老化などによる不調続きだった自分の肉体が、突然、健康体になっていたことを不思議に思い、何が起こったのかについて尋ねた際に、提示された内容がこの変化した題字にある「イルヴァース世界における不破昭三」なのだが、当初は意味が分からなかったこのレベルやスキルなどの表記もようやくその意味するところが理解できるようになった。


レベルというのは、自分の版であり、型式のようなものだ。

別の言葉で言い換えるなら、バージョン。

息子や孫たちが没頭していたテレビゲームのレベルとほぼ同義であるらしく、この数字が大きくなるほど、最新で、高性能な自分になったことを表しているようだ。


25歳にまで若返り、スキルなどの恩恵も受けた今の体は、元の世界にいた時の同年齢の頃の自分をはるかに凌駕し、アメリカ人が好むコミックヒーローのような荒唐無稽な力が宿っている。

乗馬における駈歩キャンターよりも速く走ることができるし、全身甲冑の大の大人を軽々と持ち上げ、放り投げることも容易いほどの膂力を得ている。

腕相撲をしてみたところ、あの獣魔グロアには少し及ばぬようであったが、まずは人知を超えた怪力といっても過言ではないだろう。


もはや何が増えたのかをいちいち調べるのがおっくうになるほどに増えたスキルの数々は、様々な行動をしているときの無意識の助けになっているようであるし、自分がこれから先、どこまで成長できるのか楽しみになってきたところではある。



次にショウゾウは、「魔導の書」に命じ、虚界ヴォダスについて、あるだけの情報を出すように求めた。

「魔導の書」は、この事項については雄弁で、その世界の成り立ちから、その性質などに及ぶ様々な知識を文字だけでなく図形や表を用いて説明している。


ショウゾウはこうした資料を読むのが、官僚時代から割と好きで、いかなるプロジェクトも部下に丸投げなどしたことは無かった。


新しい技術や事業などに、何らかの形で関われる興奮が得たくて当時の通産省に入省を望んだくらいだったのだ。


朝方、エリエンをレイザーたちと再会させ、「少し休む」と自分は一足先にこの書斎兼私室にやってきたのであるが、読み進めるほどに虚界ヴォダスだけでなく、この世界自体に対する理解が深まり、その興奮から眠気がやってくる気配がない。


いや、それだけではないな。

自分が知りうる中で最強の魔法使いであるヨランド・ゴディンとの死闘。

さらには、多くの血が流れた夜でもあった。


血が騒いで、治まらないのも仕方がない。


活力が漲り、肉体の疲労はまるでない。

だが、長年の習慣から、少し眠りたかったのだが、困ったものだ。


少し、酒でも飲むかと執務机から立ち上がった時に、扉がノックされる音が聞こえた。

ショウゾウは、「ブック!」と唱え、「魔導の書」を慌てて消した。



「入っていいぞ」と声をかけると、部屋を訪れてきたのは、アラーニェだった。


両手に葡萄酒の瓶と二人分のグラスを持って、その白磁のような顔の白さに映える深紅の唇で妖しく微笑む。


ショウゾウは、「気が利くのだな」と言い、アラーニェを手招くと、紫がかった暗赤色の液体を注いだ杯で軽く乾杯した。


そして、二人でしばし見つめ合い、無言で杯を傾けた後、ようやく張りつめていた神経がほぐれたのか、瞼が重くなってきた。


ショウゾウはアラーニェに礼を言い、部屋の外に送り出すと、寝台に倒れこみ、ようやく訪れた安寧と静けさに身を委ねた。


長い夜であった。


表の世界ではもうすっかり太陽が昇っているのであろうが、そんなことには今のショウゾウにはどうでもいいことであった。


エリエンを無事救出できたことの安堵感と達成感に包まれて、つかの間の休息を味わいたかった。



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