第148話 大魔法院の大師
司王府の地下牢に閉じ込められているエリエンをいかに救い出すか。
ショウゾウがまず考えたのは、≪
≪魔人≫や≪
これが一番、危険が少なく、血が流れない方法であったのだが、アラーニェたちの指摘でこれは不可能な方法であることが分かった。
光王が住む王城や別天地は当然のこととして、オルディン大神殿や司王府などオルドの民と関りが強い場所などには、古よりオルディン神から秘伝として授けられた≪
≪
司王府の各所に隠された≪
闇がこのイルヴァースから姿を消し、光が地上に満ち溢れてから、気が遠くなるような月日が流れた。
闇を恐れる者は絶え、闇からの護身のための手段であった≪
≪
「ナクア! 聞こえぬか? ……やはりこれは、≪
ショウゾウは、万が一のための脱出方法として、ナクアに声をかけたのだが、どうやら、この場所の≪
ヨランド・ゴディンが、オルディン大神殿の敷地一杯に張り巡らせたこの光る巨大な魔法陣にある文字や記号。
これがおそらく≪
ヨランド・ゴディンは、魔法以外にも≪
そう考えて間違いなさそうだ。
「皆の者! この老人こそが、怪老ショウゾウだ。近寄れば、≪
ヨランド・ゴディンは、集まってきた大魔法院の魔法使いたちにそう支持し、己は、何やら大掛かりな魔法の詠唱を開始した。
指示を受けた魔法使いたちもそれぞれが得意とする魔法の詠唱を始める。
百人近い魔法使いと同等の≪
「
魔法使いたちの攻撃が開始された。
この≪
魔法の効果もより大きく、安定しているようだった。
「接近して来ぬとなるとこの位置はまずいな」
ショウゾウは無詠唱かつ無称呼で、風魔法の
ショウゾウの周りに風を帯びた魔力の流れが起きて、体が宙に浮く。
そしてすさまじい勢いで、オルディン大神殿の建物の上空に移動し、迫りくる数々の攻撃魔法から逃れた。
その移動の
そして、それと同時に、巨大魔法陣から湧き出てくる≪
≪
どうやら彼らは、例の≪
「……峻厳たる天の
ヨランド・ゴディンの詠唱が終わり、命を賭した叫びのような魔法名の称呼とともにショウゾウに向かってその魔法は放たれた。
上空の雲が渦巻くように変化し、そこから幾筋もの稲光が発生したかと思うとそれが球状に寄り集まって、ショウゾウの真上から落ちてきた。
一瞬のことであった。
しかし、ショウゾウも全身の≪魔力≫を闇に属性反転させ、≪
≪
対魔法使いの戦いでは有効な魔法で、伏魔殿で師事していたアラーニェの勧めで契約することにしたのだが、ショウゾウはそれをさらに闇魔法に反転させて使用した。
明滅する黒い光球がショウゾウを中心に展開し、ヨランド・ゴディンの≪
周囲の大気が激震し、空間が歪む。
それに耐えられなかったのかオルディン大神殿の建物が崩壊し始め、庭木などがその衝突により発生した高熱で発火した。
青白い輝きを放つ雷の玉は、闇と混じり合うような変化を見せたがやがて、跡形もなく爆ぜた。
高熱と爆発によって発生した大量の煙や土埃によって、ショウゾウがいたあたりの様子はうかがい知ることができなくなっていたが、少なくともその姿があったあたりには人影はなく、大魔法院の魔法使いたちは歓喜の声を上げた。
「さすが、大師様だ。これでは、どんな怪物であってもひとたまりもあるまい」
その場にいた全員がそう思い、師であるヨランド・ゴディンの方を振り返り、見た。
ヨランド・ゴディンは、顔から滝のような汗を流し、荒い息をして、今にも息絶えてしまいそうなほどに疲労困憊していた。
そして、右手に持っていた杖を掴んでいられなかったのかそれを落としてしまい、自身もゆっくりと地上に降り、膝をついた。
≪
大量の魔力を消費するために、巨大魔法陣から送られてくるそれを合算しても尚、命を削り、全魔力を絞り出す必要があった。
魔法効果の制御と安定は、他の魔法とは比較にはならず、そのあまりにも強大な威力から周辺の被害を最小限にするためには極限の集中と緊張を強いられたのだった。
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