第69話 黒大蜘蛛の顎(あぎと)
≪黒狼狩猟団≫の燃える屍を眺めながら、ボスモンスターの
「やはり、≪
リーダー格の男は最後まで命乞いをやめなかった。
どうやら全身の負傷で戦える状態には無かったらしい。
もう一人の男はやはり死んだふりをして隙を伺っていたようであり、≪
干した果実とパン。
それを水に浸して、胃袋に詰め込む。
もう三人の死体は焼け焦げ、火は消えてしまった。
ボスモンスターの部屋の扉は≪
この状態を維持し続けると、微量ずつではあるが≪
だが、その消費を物ともしないほどの≪
先程の魔法使いの命を奪った際に、≪
≪
あの≪黒狼狩猟団≫の魔法使いが持つ≪
まだ検証が必要であるが、これが、スキル≪オールドマン≫のレベルアップの効果なのかもしれないとショウゾウは考えた。
この推理が正しければ、魔法使いの命を奪えば、その分だけ、己の≪
「……おっと、お出ましのようじゃな」
地面が盛り上がり、そこから出現した肉塊がしばらくうねうねと蠢き、そして巨大な一匹の蜘蛛になった。
背には女の顔に見える模様が入っており、その部分をこちらに誇示するかのように持ち上げ、威嚇している。
『≪魔導の書≫に導かれし者よ。……闇の解放者よ。
これまで二度の討伐では一切語りかけてなど来なかったが、
それは鼓膜に伝わる音では無くて、何かの念波のようなものであった。
そして、前の時とは異なり女の声のように聞こえた。
低く、影があるような陰気な声だった。
「貴様は何者か。≪悪神の問い≫におった奴とはどのような関係か?」
ショウゾウはそう問いかけたが、応えはなかった。
その代わりに、口から粘性の糸を吐き、身動きを封じようとしてきたが、ショウゾウには油断は無かった。
転がってそれを躱すと、年齢を感じさせぬ機敏さですぐに立ち上がった。
肉体が五十四歳まで若返ったこともあって、≪怪力≫や≪軽業≫といったスキルの恩恵をようやく感じられるようになった。
素の能力が低すぎた以前とは異なり、レベルも16にまで上がっている。
「闇より出でて、彼方の敵を……」
そして鎌状になった
「ぐっ」
前腕の肉が抉れ、痛みで顔が歪む。
前に一緒に戦った≪安全なる周回者≫のシィムによれば毒はないらしいが、腕を噛む力が強く骨ごとへし折られそうだ。
いいぞ。
そのまま、不用意に噛みついていろ。
ショウゾウはスキル≪オールドマン≫を発動し、
腕の傷が癒え、それにつれ
ようやく異変に気が付いたのか、
それは巨体に似合わぬ身のこなしであったが、襲ってきた時ほどの機敏さは感じられない。
しかも退いたあと、まるで怯えでもするかのように向かってこない。
好機じゃ。
「闇より出でて、彼方の敵を穿て、真なる火よ」
ショウゾウの≪
「
黒い炎の弾が空気を切り裂くような摩擦音をたて、
避けようとした
そしてその穴から這い出てきた黒い火が瞬く間に全身を包み、黒大蜘蛛はまるで老女の断末魔のような不快な悲鳴を上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます