第38話 死は平等に
年増の売春婦の後、さらに三人ほど殺してみた。
酔って絡んできた若いチンピラ。
裏路地にいた浮浪者。
そして追い剥ぎの類と思われる、刃物をちらつかせてきた男。
いずれも面識はなく、名も知らぬ。
どのような人生を送ってきたのかも興味はない。
善人であろうが、悪人であろうが、死は誰のもとにも平等に訪れるのだ。
一晩で四人殺すことができたが、これは幸運と呼ぶほかはなかった。
まず第一に手頃な獲物を探すのが困難であり、さらに
スキル≪オールドマン≫を使われた対象者はいずれも暴れだしたりすることなく、すぐに大人しくなったため、争いやトラブルに発展することもなかった。
精気を吸われた者は全身の力が抜け、すぐに脱力状態に陥る。
そのため、異変に気が付いた時にはもうすでに反抗する力が残っていないようであった。
老衰死させた死体はその場にそのまま残してきた。
≪
それに火を使うという行為は、かえって事の発覚を早めてしまうことに気が付いた。
せっかく
そのまま放置する方が見つかりづらい。
衣服や所持品などもそのまま現場に放置した。
これは死人と自らの繋がりは何もなく、仮に死体の身元が明らかになっても問題ないと判断したからだ。
身包みはがすとなるとかなり時間がかかってしまうし、所持品を奪うとそれが確たる殺人の証拠となってしまう。
外傷も無く、争った形跡もない。
被害者の共通点は、謎の老化現象により、老衰死していたということだけ。
物盗りでも、怨恨でもない謎の連続不審死。
そう世間に認識される方が望ましかった。
東の空が明るくなる前に、ショウゾウは宿の部屋に戻り、そしてしっかり眠った。
≪オールドマン≫で精気を大量に得た後なので、もちろん疲れてはいない。
それはもう習慣というか、翌日を真っ新な気持ちで迎えるための儀式のようなものであった。
目標を達したという満足感とまた若返ることができたという喜びをかみしめ、ショウゾウはすやすやと寝息をたてたのであった。
そして翌朝、晴れ晴れとした気持ちで目を覚ましたショウゾウは身支度を整え、「魔法院」と呼ばれる場所に向かった。
「魔法院」とは、その名の通り魔法を学びたい者が集う学校のようなものであり、魔法を習得できた者たちの互助組織の様な役目を担う場所であるらしい。
冒険者ギルドの受付嬢であるナターシャの話では、そこには魔法に関する書物が多く所蔵されていて、新たな魔法を契約するための魔法陣などの設備も整っているのだとか。
魔法陣については、アンザイルが描いたものを記憶していたし、その後、≪魔導の書≫で調べて、正しい描き方を習得済みだ。
だが、宿の床に勝手に書くわけにもいかず、既成のものがあるなら、それを利用した方がいいと思い立ったわけだ。
それにショウゾウは≪魔導の書≫が与えてくれる知識に全幅の信頼を寄せていたわけではなかったのだ。
この≪魔導の書≫には意思のようなものがある気がしていた。
その意志により、何者かの意図に沿った情報しか開示せず、不都合な情報については隠しているのではないかとショウゾウは疑っていたのだ。
魔法についても然り。
一つの情報源に妄信するのは危険なことだ。
次の迷宮攻略までの合間に、「魔法院」を訪ね、そして自らの目で、この異世界における一般的な魔法とやらについて学んでみよう。
そう考えたのだった。
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