第10話 Q.E.D




どうだった?楽しかった?



彼女の勝ったような笑みが頭から離れない。あのにたぁ、って横に開いた口。そっから出てきた言葉が、耳から離れてくれない。




消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ




ずっと彼女に見つめられているように感じる。

ずっと彼女に話しかけられているように耳が錯覚している。


またすぐにでも会いたいなんて思ってしまう。



これは重症だなぁ。


彼女の言っていた通り、私は限りなく当事者みたいだ。今から探しに行く旭くんと同じ。なんにも違わない。


彼女を救ってやった気でいた。

彼女をもう捕まえたと確信していた。

彼女はもう自分から離れては行かないと決めつけていた。




ぜーんぶ彼と同じ。


でも私は彼と違って、知っている。

「彼女」を知っている。


彼は彼女しか知らない。「彼女」の存在を知らない。



だから私は彼を手に入れに行く。私が「彼女」になって、彼の彼女になる。



これは通常の彼女なんて意味ではさらさらない。もっと酷い。もっと深いなにか。



彼女のあの、今にも殴りたくなるような不敵な笑みを、この手でぶっ壊してやりたい。


でも残念ながら私は彼女に手をあげられない。


あの公園をさる瞬間、抑えてたものを放ってやろうかと思った。

できなかった。

自分でも不思議だったが、すぐに納得がいった。

あの話を聞いたあとの私は変わってしまった。私にとっての彼女がいつの間にか「彼女」になっていた。


だから私は彼女に手をあげられなかった。

 

               ───Q.E.D


だから私は、別のやり方で彼女の笑顔を壊すことにした。暴力なんかより余程美しい方法で。



私がどこに向かっているか分かるかい?


正解は、さっきまでいた中学校。






              の隣の建物だ。


















――あとがき――

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