大文字伝子が行く174

クライングフリーマン

大文字伝子誘拐事件(後編)

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

 斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 村越警視正・・・副総監付きの警察官幹部。あつこがEITOに移ってから、副総監の秘書役を行っている。

 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。

 江南(えなみ)美由紀警部補・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。

 青山たかし元警部補・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。

 河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 橋爪警部補・・・丸髷署生活安全課刑事。愛宕の相棒。

 久保田管理官・・・EITO前司令官。斉藤理事官の命で、伝子達をEITOにスカウトした。

 中津健二・・・中津興信所所長。

 中津(西園寺)公子・・・中津興信所所員の1人だが、中津健二と結婚している。

 中津敬一警部・・・中津健二の兄。捜査一課、捜査二課、公安課、EITOとの協同捜査等を経て、副総監付きの特命刑事となる。警視庁テロ対策室所属。村越警視正の部下。

 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。

 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。

 根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。

 藤井泰子・・・伝子のお隣さん。モールで料理教室をしている。

 大文字綾子・・・伝子の母。介護士。高遠を婿殿と呼ぶ。伝子に「クソババア」と呼ばれることがある。

 池上葉子・・・池上病院院長。高遠の中学卓球部後輩彰の母。彰は故人。

 山城順・・・伝子の中学の後輩。愛宕と同窓生。今は、非常勤の海自事務官。

 山城(南原)蘭・・・山城の妻。南原の妹。

 物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友。

 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 大蔵太蔵(おおくらたいぞう)・・・EITOシステム管理部長。

 本郷隼人二尉・・・海自からEITO出向のシステムエンジニア。本郷弥生2等陸佐の弟。

 青木新一・・・Linenを使いこなす高校生。友人の致傷事件の関係者。後に伝子達の協力者になる。

 須藤桃子医官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。

 高坂一郎看護官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。

 中島空自二佐・・・MAITO当直班長。

 島袋英一・・・高速エリア署交通課課長。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午後1時。

 オスプレイで伝子のマンション方向に向かっていた、なぎさが、ジョーンズに呼ばれた。

「隊長代理。本部から連絡です。」なぎさがインカムを取ると、理事官の叫びが聞こえた。

「やられた。大文字君が襲われた。高速1号線だ。急げ!」「ジョーンズ!」「了解!」

 程なく、現場に到着したオスプレイから、なぎさがスパイダーシュートを伝って降りて来た。スパイダーシュートとはEITOが開発した、蜘蛛が蜘蛛の巣を伝って降りるような、オスプレイから迅速に地上に降りる為の装備である。

 炎上していた筈のトラックには、MAITOが落した消火弾で鎮火していた。

 MAITOとは、Mighty Air Self-Defense Force Independent against Terrorism Organizationの略で、空自の特殊部隊で、MAITOのオスプレイには災害救助の為の装備が搭載されている。消火弾とは、文字通り消火を迅速に行う為の消化液バルーンである。

 MAITOの当直班長と、事故整理に当たっていた、高速エリア署の交通課課長が、なぎさに寄って来た。高速エリア署自体は葛飾区にあるが、高速道路のトラブルは高速エリア署が担当している。

「MAITO当直班長の中島です。」「高速エリア署交通課島袋です。」「EITOエマージェンシーガールズ隊長代理の橘です。」

「まだ、子細を確認中ですが、燃料タンクが空です。それで、大炎上を免れたのでしょう。本来なら、後続の、この2台も炎上している筈です。」と、中島が説明した。

「この車の後を走っていて、事故に遭遇した車のドライバーがサイレンを鳴らさず走っていたパトカーに、危険だから引き返すように指示されたので、引き返して違和感を覚えてドライブレコーダーを確認したところ、通報で駆けつけたパトカーではない筈だと気が付いたそうです。違和感の正体はこれです。」と、島袋が自分のスマホの写真を見せた。

「写っているのは私ですが、以前の制服の時に撮影したものです。」

「詰まり、島袋さん、偽警官とおっしゃるのですか?」と中島が感心した。

「恐らく、パトカーも偽物でしょう。この2台に乗っていたのは、実はエマージェンシーガールズの隊長です。今朝退院されたばかりです。ご主人と、護送のEITO隊員達もいません。つまり・・・。」なぎさは躊躇した。

「誘拐ですか?」と、中島と島袋は異口同音に叫んだ。

 午後1時半。EITO本部。会議室。

 マルチディスプレイに、村越警視正、久保田管理官、あつこ、中津警部が映っている。

「前代未聞だ。」と村越警視正が苦虫を潰した顔で言った。

「極秘裏に、迅速に救出をしなければいけませんね。」と久保田管理官は言った。

「なぎさの話では、車内にDDバッジは見あたら無かったようです。犯人に奪い去られたか、あるいは・・・。」とあつこが言うと、別の画面の大蔵が言った。

「衝撃でショートした可能性もあります。その場合は、修復する可能性もありますが、今は何とも言えません。」と大蔵が言った。

「銃撃戦、例えば煽り運転で攻撃された場合は2台とも迎撃装備はありますが、この天界は想定外です。だが、追跡用ガラケーが生きていたのは、文字通り、不幸中の幸いです。」と、本郷は言った。

「取り敢えず、我々は可能なことから手を付けるしかありません。中津興信所に、病院の患者に不審な人物がいたかどうか調査させましょう。池上先生に『常連』の患者を紹介して貰って。」と中津警部は言った。

「私も、夏目リサーチに、『半グレ』の動きがあったかどうかを確認します。」と、夏目警視正が言った。

「草薙。ネットにサンドシンドロームからのメッセージがないかどうか確認しておいてくれ。渡、追跡情報を適宜報告しろ。」と理事官は指図して、草薙と渡は即答した。

「理事官。Nシステムも利用して、不審車両の出入りをチェックしましょう。偽パトカーの行方も気になります。」と久保田管理官が言った。

「そうだ、古い制服と言ったな。白藤。手下に命じて警察官の衣装のレンタルまたは購入があったかどうか調べろ。同業者にも声をかけてな。」と、理事官は言った。

「了解しました。手下に命じて調査します。」と、みちるは言った。

「手下だったんだあ。」と仁礼と財前は納得した。

「理事官。オスプレイ2号機組が帰還しました。」と、河野事務官は言った。

「すぐに、会議室に来させてくれ。」と、言った。

「私は来なくても良かったかな?」と須藤医官と高坂看護官が入って来た。

「滅相もない。」と、理事官は慌てた。

 午後2時。

「理事官。物部氏より入電です。電話です。」と河野事務官が言った。

「繋げ。」「理事官。物部です。挨拶は省略させてください。実は、青木君のLinen仲間からの情報です。井の頭公園で、偽パトカーらしきものを見た、という者がいます。すぐに警察に連絡するように言っておきました。」と言う物部に、久保田管理官が「ありがとう。物部君。感謝する。大文字君の無事を祈ろう。」と、言った。

「理事官。ヒロインズ玉井店長によると、一昨日、パーティグッズとして、警察官の旧制服をレンタルした者がいます。返却予定日は明日です。返しにくるかどうか分かりませんが、ダーリンに張り込みを指示しました。」と、みちるは言った。

「お前、ダーリンって今言ったか?」と理事官が言い、やって来た筒井が「指示ねえ。警部補が警部に向かって・・・。」と感心した。

「先輩、ばれちゃいましたね。」と、あかりが言った。

「今、ばれたって言った?」と日向が伊地知に言った。「言いましたね。」

「えーとぉ。理事官。追跡用ガラケーが停まりました。」と渡が言った。

「どこだ?井の頭公園三角広場近くの雑居ビルです。」と渡が応えると、「なんだ、偽パトカーの近くじゃないか。」と、草薙が言った。

「渡。その雑居ビルって、パブリッシャビルのことか?」と、夏目警視正が尋ねた。

「よこご存じで。」「半グレのNPO法人パブリッシャ平和救済協会が入っている。」と夏目は言った。

「NPO法人なのに、半グレなんですか?」「ああ。実態はね。公安がマークしている。麻薬を扱っているのではないかと疑われている。」「それが何故誘拐を?」

「とにかく、急げ!」と、理事官は言った。

 午後3時。伝子達が消えて、もう4時間が経過しようとしている。

 午後5時。井の頭公園。三角広場。

「5人だったな。連れて来たか?」集団のリーダーが那珂国五混じりで言った。

「連れて・・・来た。」と、苦しい声で徳山は言った。

「どこにいる?」どこからか現れた伝子が言った。

「ここにいる。目が不自由か?日本語が不自由か?脳みそが不自由か?」

「裏切ったのか?」と、男は徳山に言った。

「いや、違うな。ちょっとした計算違いだ。平和への案内人、エマージェンシーガールズ1号、推参!」と、伝子が名乗りを上げた。

 集団の男達がリーダーの合図を待たず、銃や機関銃を乱射した。

 半グレの1人が、流れ弾に当たって、倒れた。

「そんな、馬鹿な・・・。」

 既に半グレを倒し、全快した大隊長が率いたチームに敗北の2字は最早無かった。

 那珂国人の集団は、拳銃や機関銃、果てはバズーカまで用意したのに、簡単にエマージェンシーガールズが倒した。

 遡って、午後3時。雑居ビル3階。

 社長室をノックする者がいた。社長の徳山は、返事をした。拳銃を持って遊んでいたが、入って来た伝子がバスタオル1枚なのを見て、思わず拳銃を机の上に置いた。

「今だ!」大町の合図で、背後から小坂と下條が徳山の両手をねじあげた。

「ててってってて!!」伝子はすかさず徳山の股間を蹴り上げた。

 大町は、自分たちを縛り上げていたロープで徳山を縛り上げた。大町が徳山の傍らをふと見ると、PCの中から、奇妙なアバターが笑っていた。

 社員達が入って来た。大町は、彼らの前の徳山を蹴飛ばした。続いて、伝子と、小坂と下條が後方からダブルキックをお見舞いした。社員達はドミノ倒しに倒れた。

「大町、連絡!」そう言って、縛れていた部屋に伝子は戻り、大町と高遠は素早く伝子に服を着せた。

「DDバッジ、奇跡的に直ったよ、伝子。」今、押した。追跡ガラケーが無事だったから、作業完了の合図になる。「よくやった、今晩たっぷり可愛がってやる。」

 社長室では、小坂と下條が、必死に皆のスマホを見つけ出した。

「理事官。ここのメモによると、午後5時に取引があります。隊長と現金を引き換えに麻薬と銃火器を持って来る那珂国の集団があります。」と小坂が言った。

「それと、PCに変な画面が映っています」と下條が言った。

 聞こえて来たのは、あかりの声だった。「よくやった、小坂、下條。後で警視からご褒美を貰いなさい。」

 午後4時。

 なぎさ達が到着した。伝子達はエマージェンシーガールズに着替えをした。

「学。愛宕達が来たら、ここで待機して貰ってくれ。」「了解。」

 午後4時半。三角広場。

 伝子は皆と簡単な打ち合わせをして、散開した。

 午後5時。井の頭公園。三角広場。

「5人だったな。連れて来たか?」集団のリーダーが那珂国五混じりで言った。

 午後7時。

 伝子のマンション。

 遅い夕食を藤井と綾子を交えて、高遠と伝子は、腹一杯食べた。

 午後7時半。綾子と藤井は帰って行った。

 高遠は「ゲームでもする?」と言った。

 すぐに、自分の言葉は無駄だと知った。伝子が服を脱ぎ始めたからだ。

「子供、2人いてもいいかな?少子化だし。」と、呟いた。

 ―完―

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